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Alcoholism

アルコール依存症 アルコール使用障害・アルコール依存

概要Overview

アルコール依存症は、かつては慢性アルコール中毒(アル中)と呼ばれ、「本人の意志が弱いからだ」などと病気ではなく人格の問題とされ、治療の対象とされないことも多かったようです。現在は、アルコール依存症という名称や病気であるという事実もかなり世間に浸透してきました。DSM-5という診断分類では、アルコール使用障害と名称が変わっています。
日本のアルコール依存症人口は、109万人、予備軍は249万人とされています(2013年 厚生労働省)。飲酒者の約1割がこの疾患に罹患し、患者の数倍の予備軍(プレアルコホリック)が存在すると言われています。飲酒する人は誰でも罹患する可能性があると言えるでしょう。

沢山のお酒の画像

アルコール依存症は飲酒のコントロールを徐々に失い、慢性進行性で潜在的に致死的な疾患です。プレアルコホリックからアルコール依存症に足を踏み入れたばかりの初期・軽症から、仕事、家庭、健康を失う重症まで様々な段階がありますが、一度罹患してしまうと、病気であることに気付き、断酒しないかぎり、底なし沼に落ちていくように人生がボロボロになっていきます。
また、アルコール依存症は患者本人だけでなく、家族を巻き込む病気です。影響を受けるのは配偶者だけでなく、その子供たちにも不登校、非行、神経症、摂食障害、うつ、アルコール依存症等の多くの問題が生じることは稀ではありません(アダルトチャイルド:AC)。また、家庭内暴力(DV)や子供への虐待(ネグレクト、心理的・身体的、性的)が生じることもあります。
以前よりは大幅に疾患の知名度が上がったとはいえ、現在でも「意志が弱いから酒を止められない」、「治らない」等の誤解に基づいた意見を耳にします。これらは事実ではありません。患者様の多くは内心では困り果て、どうにもならず悩んでいます。適切に介入し、正しい知識を提供すれば、自ら治療を望むことも多く、そして、回復可能です。
他の全ての疾患と同様に、早期に発見し、軽症のうちに治療を開始すれば、より短期間に、少ない労力で回復することが可能です。

原因Cause

  • 遺伝要因:

    アルコール依存症患者の近親者では、この疾患を有する割合は3-4倍で、双生児研究や養子研究でも遺伝要因があることが明らかにされています。また、お酒に強い、衝動性が高い、先行する統合失調症や双極性障害がある人々はアルコール依存症発症の危険性が高いといわれています。

  • 環境要因:

    飲酒に対する文化的態度、アルコール入手の容易さ、ストレスの程度などが挙げられています。

診断Diagnosis

DSM-5におけるアルコール依存症の診断基準

臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こすアルコール使用の不適応的な様式で、以下の2つ以上が、同じ12か月の期間内のどこかで起こることによって示される。

  • アルコールをはじめのつもりよりも大量に、またはより長い期間、しばしば使用する

  • アルコールを中止、または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功のあること

  • アルコールを得るために必要な活動、アルコール使用、または、その作用からの回復などに費やされる時間の大きいこと

  • アルコールの使用に対する渇望・強い欲求または衝動

  • アルコールの反復的な使用の結果、仕事・学校または家庭の重大な役割義務を果たすことができなくなった

  • 持続的あるいは反復的な、社会的または対人関係の問題がアルコールの影響により引き起こされたり悪化したりしているにもかかわらずアルコール使用が持続

  • アルコールの使用のために重要な社会的、職業的または娯楽的活動を放棄、または減少させていること

  • 身体的危険のある状況でアルコールを反復使用する

  • 精神的または身体的問題が、アルコールによって持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、アルコール使用を続けること

  • 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの

    • 酩酊または希望の効果を得るために、著しく増大した量のアルコールが必要
    • 同じ量のアルコールの持続使用で効果が著しく減弱
  • 離脱、以下のいずれかによって定義されるもの

    • アルコールに特徴的な離脱症候群がある(アルコール離脱の基準AとBを参照)
    • 離脱症状を軽減したり回避したりするために、アルコール(またはベンゾジアゼピン等の密接に関連した物質)を摂取する

治療Treatment

当院における治療

  • 入院治療

    クリニカルパスを用い、初期の離脱管理、併発症治療、薬物療法、集団・個別認知行動療法、集団療法(ピアサポートなど)、断酒会・AA等との連携、作業運動療法、心理士によるカウンセリング、病棟内・内観療法、家族への支援(クラフト・心理教育・家族会)、行政手続き・ 住宅準備支援など環境調整などを行います。

  • 外来治療

    スタッフ一同が「ようこそ」の気持ちで治療にあたります。患者様のお気持ちに沿って治療を進めて参ります。支持的精神療法、心理教育、認知行動療法、薬物療法、断酒会・AA参加調整、デイケア、家族支援(クラフト・心理教育、家族会)などを実施します。

  • 薬物療法

    飲酒欲求を軽減する薬やアルコールの体内での分解を阻害してお酒を飲みづらくする抗酒剤、断酒初期に離脱症状や不眠を軽減するお薬などを必要に応じて使用します。断酒を決断できない方には、先ず、減酒剤を用い、節酒から始めることもできます。

  • 外来個別カウンセリング

    お酒の問題のために自信を失っている、背景に家庭関係や職場などの人間関係の悩み、自分の性格の悩みがある場合など、心理士とのカウンセリングを行えます。

  • 認知行動療法 CBT

    外来では個別に心理士とワークブックを用いて行います。デイケアの集団CBTに参加することも可能です。入院では集団CBTを実施していますが、個別CBTも必要に応じて実施します。

  • 集団療法

    入院治療では、疾患学習会やピアサポートの会、レジリエンスの会を実施しています。講義形式やミーティング形式で行います。

  • ピアサポート

    ピアサポートは仲間による支援のことであり、回復者や既に退院して回復を目指している人々と行うミーティングです。自分と似た状況から回復した先行く人々と出会うことにより、回復への道のりがより実感として得られるはずです。

  • デイケア・ナイトケア

    「お酒はやめたいけれど家にいると飲酒してしまう」「単身で孤独感が強い」「家庭に居場所がない」「仕事をしたいが前に進めない」などそんな時に、デイケア・ナイトケアを自宅以外の居場所としてご利用いただき、スタッフと共に生活を整え、新しい生活・人生へとつなげることができます。

  • 家族会(みつば会)

    第2・第4金曜日13:30より開催。

  • クラフト家族のより効果的な対応を学ぶプログラム

    第1・第3月曜日16:00~、第2・第4金曜日13:30~(みつば会と併催)。

  • 札幌断酒木曜の会

    毎週木曜日18:30より、当院断酒会室にて開催。

  • 女性断酒会・脱依存症の会

    女性のみの会なので女性患者様が安心して本音で話せます。すいれんの会、サルビアの会、土曜女性の会、なないろの会があります。

  • AAメッセージミーティング

    第2・第4水曜日19:00より当院断酒会室にて開催。

  • 女性の患者様への対応

    女性の患者様は、男性とは異なる悩みや問題が依存症のきっかけや持続要因になっていることがあります。過去のトラウマや夫との関係、夫の浮気など男性には話し難いものです。当院では女性心理士による個別の心理面接が行えます。また、女性だけの断酒会や集団療法を実施しています。

  • 減酒治療

    アルコール依存症の回復には断酒が必要ですが、すぐに断酒に踏み切れない場合は、減酒薬を用い、減酒から始めることもございます。

  • 併発症治療

    併発する双極性障害、うつ病やパニック症・社交不安症など不安症等に対する治療も必要に応じて行います。身体疾患に対する治療も総合診療の範囲内で対応可能です。背景にADHDを有する方々も一定数おり、抗ADHD薬が奏効することもあります。

  • 環境調整

    退院後の住居などの準備や行政手続きなどをお手伝いできます。退院後の再飲酒が心配な場合、単身で生活維持が困難な場合など、グループホームや共同住居、借り上げアパートなどを手配します。

  • 高齢者、認知症併発のアルコール依存症

    高齢、認知症併発のアルコール依存症の患者様の治療では、従来のアルコール依存症治療と高齢・認知症治療を合わせて行う必要があります。具体的には、身体合併症への治療、栄養療法、身体的・認知的リハビリテーション、環境調整(退院後の施設入所の手配、住居の準備、行政手続き)です。
    当院は認知症治療も経験豊富です。精神科医、内科・総合診療医、歯科医(非常勤)、看護師、歯科衛生士、理学・作業療法士、介護福祉士、管理栄養士、精神保健福祉士によるチーム医療を実践しています。当法人高齢者部門と密な連携を行い、円滑な介護への移行が可能です。当院介護療養病棟、介護老人保健施設、認知症対応型グループホーム等への移行が可能です。

予後・治療後の注意Precautions

数か月以上にわたり断酒をしていた人が再飲酒する場合は、強い渇望に負けてというよりも、「喉元過ぎれば」で、つらい記憶が薄れ、気が緩み、「つい」飲酒してしまうことが多いのです。「一杯だけ」「今日だけ」「少しなら大丈夫」「ばれないかもしれない」などの考えが浮かび、手が出てしまいます。しかし、脳内報酬系は壊れていますので、飲酒のコントロールができず元通りの飲み方になってしまいます。この「つい」再飲酒を防ぐことが、回復へのコツなのです。


アルコール依存症は再発リスクの高い疾患です。CBTで再発予防や再発時の対処法について知り、あらかじめ備えておくことが大切です。
再発予防のため、通院、服薬、自助グループ、デイケアを一定期間継続することが有効です。断酒期間と再発率は反比例の関係にあり、断酒期間が長くなるほど再発リスクは下がります。

アルコール依存症について
 臨床医による概説と対応の要点 

医療法人耕仁会 札幌太田病院 
理事長・院長 太 田 健 介 

≪札医通信≫
2022.8.20 No.660号 p2-8

アルコールフォーラム アルコールフォーラム抄録集

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