いわゆる初期分裂病における病棟内・内観療法について


札幌太田病院精神科   阿部 一九夫
太田 耕平、池田 明穂、吉川 憲人、小川 説子
太田 秀造、太田 健介、響 徹、熊岡 構市

第100回日本精神神経学会総会 札幌コンベンションセンター 2004.5.20にて発表
 

【目的】我々は1996年以来、統合失調症を含む様々な精神疾患に病棟内で行う内観療法が有効であることを報告している。この度は中安らのいう初期分裂病類似の症状をもつ症例に、内観療法の著効例があった事に気づき、それらの症例を検討してみた。

【症例】この約2年間に当院にて内観療法を主目的の短期入院をした症例のうち、入院時主訴のなかに幻聴・妄想様体験があった9例を対象とした。内訳は男2名、女7名、年令は40才代1名、30代3名、20代5名である。入院期間は薬物依存を合併し90日であった一名を除き、8名は10日から30日以内である。これら症例に分裂病のシュープ(中安)の既往、陰性症状はない。内観療法は全例に吉本原法に基づき病棟内で7日間行われていた。

【方法】これらの症例に付、初期分裂病の四主徴の有無(自生体験、気づき亢進、漠とした被注察感、緊迫困惑気分)および、幼児期心的外傷体験の有無、いじめ、いじめられ体験、不登校があったかどうか、内観療法としての効果、併用薬剤の種類と量などについてカルテから検索した。

【成績】9例全員が初期分裂病の四主徴をほぼ満たしていた。内観療法は8例に奏効した。家族内での幼児期心的外傷体験については8例に、また、いじめ、いじめられ、不登校体験については、どれか一つが全例に認められた。 【結論・考察】初期分裂病は長期間にわたりシュープ・陰性症状が出現しないものがあり、一つの疾患単位と考えられている。一方、我々は内観療法の作用機序のうちで大きなものは幼児期からの複雑な心的外傷体験を認知の修正により癒す作用であると考えている。初期分裂病と思われる我々の症例が内観療法で効果があり、かつそれら症例が幼児期心的外傷体験を有していることは、心的外傷が発病因子として大きいことを示唆しており、このような病態の治療に道を開くものと考えられる。



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