心身症などの治療システムと治療資源・環境の成長
-多軸診断と多面的段階的治療のための十段階療法25年の経験から-


札幌太田病院  太田耕平 大西祥子 酒井佳子
中川孝範 太田秀造 池田明穂


日本心身医学会北海道支部第26回例会抄録、2001
同会(平成13年2月25日)にて発表

1.はじめに.内観療法との出会い:
 昭和49年に攻撃性の強いアルコール症に集中内観療法を試み著効を得た。その経験からケアプランとして十段階療法を試作し,集中内観と他の有効性の高い治療方法を段階的、多軸的に組み合わせた。当初はアルコール症に合併する心身症を対象としたが、アルコール症者を父とする子供(AC)の各種心身症者の心的外傷の発見と治療にも有効であった。精神分裂病者にも有効性を認め,同病者用の十段療法も作成・実践し10数年を経た。有効性の高い治療技法と優れた治療者が求められる。

2.ライフサイクルの発達課題としての心身症. 1次・2次・3次予防的視点:

 乳幼児から高齢者まで各世代が抱えやすい葛藤,予防との解決をはかり,予防的支援・早期発見・早期治療・早期自立支援を行う。家庭・学校・職場・地域そのため人格発達診断、家族力動診断などを要し、それぞれの発達を援助する視点と短期間で効果のある具体的支援が大切である。

3.心理士・ケースワーカートなど職員と治療法の拡大、患者会と退院者の会:

 はじめは個人療法、次いで少人数の集団療法(心理士が活躍)が可能となり、さらに自主的治療グループ、これが入院患者会に成長した。患者会メンバーが退院後は退院者の会(アルコール症男性は“しらかば会”,女性は“サルビア会”,さらに男性分裂病者は“麓友会”,女性は“ひまわり会”)をつくり,病院内・外での親睦、学習を行い、退院者の受け皿として、入院中の患者に退院意欲と安心感を与えた。拒食・過食症者のECの会も結成され、当院を退院した元治癒拒食症がまとめいる。また退院者が入院者の会に参加し対話することは相互に自信回復、退院促進、退院後の家庭・地域適応に有益で,これらの支援・指導はケースワーカーの貴重な活動に負うところが多い。これらの活動がデイケア・ナイトケアの原点にあった。

4.家族会・家族教室と家族療法の成長・発達:
 心身症者の背景に心的外傷と葛藤がありうる。それが家族間・友人葛藤,体験喪失であることも多い。長期入院を避け、早期の治療成功と自立,さらに再発予防には家族の支援,家族からの自立、家族療法は必要であった。父、母の内観療法を求めることも多い。患者と葛藤をもつ家族、特に患者の退院を拒否する家族への教育,集団療法や家族会による支援は有効であった。患者への正しい対応や病院での治療法を開示するなど,ケースワーカーが活躍した.現在はアルコール症,精神分裂病,思春期症の各々に家族会がある。治療環境として家族会などの働きは重要である。

5.共同住宅・福祉ホームの開設と充実:
 治療終了後も退院を拒む患者、引き取りを拒む家族も多い。そこで安価な共同住宅を用意し病院から配食やデイケア参加を条件に退院させた。最近は親子分離を目的で共同住居の利用者が増えている。ケースワーカーが広汎な生活支援を行った。現在、共同住宅は10軒(定員60名),うち独身女性用は定員12名である。これら退去者で近隣住民は約150名になる。重症心身症者にとっては病院、退院者の会、デイケア施設近くの居住も有効な支援のひとつである。

6.在宅支援・訪問看護・地域保健福祉活動:

 E Cの会(拒食症者)など退院者の会、断酒会,女性断酒会,各種家族会、外来集団療法,デイケアT,デイケアU(アルコール・薬物依存者が半数),外来や訪問者護センターからの訪問活動などで支援を継続したい。行政・福祉担当者の支援・協力を受け、1次,2次,3次予防に貢献しうると思われる。これらの円滑な協力にはそれぞれの情報開示・交換を要し,これにより入院期間の短縮,家庭・社会復帰率、自立可能性の向上が期待できよう。地域的視野での支援を充実したい。

7・職員教育・研究発表による成長、診療情報の公開・共有が有効性を向上:

 現在、院内・外に17〜18の支援組織ができた。これらの活動レベルを高い水準に保つためには職員の新鮮な知識・技術・意欲・創造・連携などの継続的な成長・向上が求められる。職員の技術と治療システムの有効性・さらに治療資源・環境などの質と量の向上が治療効率や社会復帰率に連動すると考えている。