今日の精神科医療について

うつ・ノイローゼ・パニック・アルコール症・摂食障害の大衆化時代を迎えて



医療法人耕仁会 札幌太田病院
名誉院長 太田 耕平

札幌西ロータリークラブ:(2004年9月14日)




1. その背景と予防…幼児から高齢者まで、家庭から職場まで
 今日の西洋・東洋文化の混合と、情報の錯綜する価値観は混乱しがちで、増加するうつ・ノイローゼなどに時代的共通点がありそうです。すなわち、@個性確立を超えて自己中心的主義、権利主張主義に近く、A防衛機制として主張行動が性格化・人格障害化する傾向を示し、B親や教師・医師の指導、治療に従うより抵抗し、C叱りの喪失とカウンセリングの受容・共感が我がままを促進し、D幼年から極めて矛盾する多くの情報・現実問題・価値観と遭遇するため自己同一性の性格が出来ず、E伝統的な母役割・父役割・家庭機能の脆弱化は、子が将来的に自己を母・父として目的化するのを困難にし、F家庭での子育てとメンタルヘルスが求められ、H増加する高齢者はうつ、せん妄、痴呆、心因反応の予防を、Iいつでも、だれでも、どこでも、心の成長と健康保持への関心・実践が求められています。

2.脱施設化と治療・支援活動の対象の拡大:患者会・家族会・体験者による支援・断酒会など地域での支援活動に参加し医療情報を得ると治療上有効です。患者さんに加えて父母・家族、更に友人・学校・職場の協力や矛盾解決が治療的に大切です。人口比で世界一多い入院病床を10万床減らし、グループホームや援護療、デイケア、訪問医療に移行する計画が実施されます。早期に退院し、病院外来やクリニックでの通院治療に移行することが普通になりました。

3.治療薬と治療方法の進歩・多様化と総合化:世代・病態にふさわしいきめ細かい対応が精神保健福祉士、作業療法士、介護福祉士、心理士、音楽療法士、診療録管理士など新しい専門職が担いでいます。統合失調症やうつ病にも従来よりも有効性の高く副作用の少ない薬が開発され期待されます。一方で安定剤・睡眠剤依存症・多剤乱用が増加しており、重複受診やまとめ服用をさけ正しい服薬行動が大切です。患者さんの安全確保と医療の第3者評価を尊重する時代です。

4.精神科医療の専門分化と救急医療の整備:小児・青年期・老人・アルコール症・パニック・摂食障害・心身症などの専門医療を目的とする施設・病棟・病院・クリニックが分化しつつあります。これらの病状の背景には過去の心的外傷があり、その癒しには認知・行動療法、内観療法、集団精神療法、家族療法など新しい治療法が必要です。自傷他害患者や救急医療に関しては精神保健センター・精神福祉課精神保健係の整備、救急隊、医師会による輪番制当番病院など公的・充実民間の協力システムが充実してきました。

5.現代病としての精神障害を予防するには:東洋思想にヒントがありそうです。@自分・人間中心より自然・宇宙中心であり、A人間の利己的目的の科学技術よりも人間の尊重を、B自己完成と権利・自由よりも、健全な自己否定と無我の自己肯定思想を、Cヨーガや気功のように副交感神経をまず賦活する営み、などが考えられましょう。一人になってじっくりと自分を見つめ反省と自戒ができれば万物への感謝が生じ、大安心できるのではないでしょうか。家族関係の回復にも、予防にも、さらに早期治療にも認知行動療法や内観療法(重症例には病棟内・内観療法)が有効です。




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