内観療法が著効であった不登校児童の1事例
−不規則な生活による不登校の生活指導として−


札幌太田病院  佐藤剛介 篠田崇次 太田秀造
響   徹 太田耕平 杉山善朗

第4回内観医学会、2001



1.はじめに:
 
 昼夜逆転の生活、遅刻、不登校を繰り返す児童に対し内観療法を施行し、退院後、不登校、遅刻などが改善した。なお当院では20年来不登校に対する内観療法の有効性を確信しており、本療法の啓蒙、周知を祈り報告する。

 
2.事例:

 男性、10代半ば、中学生。問題行動:不登校と軽い暴力。生育歴:父、母、兄、弟の五人家族。少し厳しい父と口うるさいが甘い母親に育てられる。小学校時代は少年野球をしており、郊外の球場まで父が毎朝送迎をしていた。中学校で野球部に入るもすぐ辞めている。母曰く、この頃より本人の様々なものに対するやる気がなくなってきた。小学時代の成績は普通であったが中学校ではおもわしくない。 


3.入院までの経緯:

 初来院3か月前より遅刻、不登校を繰り返す。以前は父が本人を毎朝起こして登校させていたが、父が単身赴任後は母が起こしていた。しかし,母に起こされると腹が立ち乱暴、暴言を吐く。学業は芳しくないものの、交友関係に問題なく、学校も嫌いではないと言う。中学校が家から程近く、家を出るのが家族の中で一番遅くてもよいことから、登校時間帯に注意してくれる人間がいないと怠けて登校しない。


4.内観療法中の経緯:

 当院受診日に1日でも早く本人が登校出来るようにとの主治医の意向により即入院、内観に入った。内観初日、2日目は無表情、3日目ではイライラし両親への迷惑はわかっていたので内観したが、その後は意味がないと拒否傾向を示した。しかし、4日目以降は徐々に穏やかになっていき6日目には実に明るい表情で内観していた。日に日に本人の表情が変化、自己開示も増え内観も深まった。


5.結果:

 内観終了後、入院第7日目より当院から母の送迎で登校し、当初は登校予定ではなかったテスト期間にも意欲的に登校した。1週間当院から登校し退院となった。当院からの登校期間で問題行動は無く、さらに3ヵ月経過し進級、1ヵ月経た現時点では1度の遅刻もなく、前向きの姿勢が出たとの教師の話である。


6.考察:

 本事例は、Erikson, E.H.のライフサイクルの初期、乳児期、幼児期、児童前期、後期の精神発達の阻害による退行、固着が考えられた。しかし、内観体験が増すにつれ、母に対する甘え、自ら起床出来ない自分への甘え、起床しない不規則な生活、不登校などの生活態度と心的態度を反省し、退行固着傾向からの離脱が明確化し、本人の自己内変革と周囲の父母、学校教師による本人への肯定的認知は内観療法の効果と言える。


 ※本文は、プライバシー保護の目的により、原文に一部変更を加えております。御了承下さい。


(参考文献)


・Erikson, E.H.:  ライフサイクル、その完結 村瀬孝雄 近藤邦夫訳 みすず書房 東京 1989
・太田耕平: 登校拒否の内観療法の有効性 第8回日本内観学会大会論文集 52-55, 1985
・出村守・太田耕平ら: 内観療法が著効した登校拒否症例の病理 第14回日本内観学会大会論文集 256-260, 1991.