幻聴・妄想と暴力・不登校を呈した高校生の治療経験
― 内観療法を含む治療経過・・・医師の視点から ―


札幌太田病院  太田耕平、響   徹、太田秀造
根本忠典、千葉信行、池田明穂
第4回内観医学会、2001




1・はじめに:


  幻覚妄想に伴い不登校や家庭内暴力の著しい高校生に3回の入院と内観療法を含む治療を行い、家庭内暴力も消減し、高校にも正確に登校、適応した症例を経験したので報告する。初診時高校1年、現在高校在学中。


2・症例:
 
 男性。1〜2歳時に父母の離婚、祖母による養育、小学校低学年時の転校などの心的外傷あり。小学校の中学年頃から、TV観賞や食事中にイライラ感、不平、不満が多くなった。中学では遅刻が増え、家出もし、教師、友人への不満や暴言から、学校側は対応困難となり、教育委員会の依頼で近医及び児童専門の精神科病院(入院半月)の紹介により当院を受診した。

 
3・初診時所見:

 10代半ば。ケガの後、鉛筆を持ちにくいと訴える。幻覚妄想(精神分裂病)、不登校、家庭内暴力と診断された。「自分が両親を殺してしまう、誰かが悪口を言っている」などの妄想があり、生活も不規則で約2年間の断続的不登校があり、家庭では父、弟への暴力や、ドアを蹴って壊すなどの行動があった。短気で厳しい父、内向的で子供に過保護で子の言うままになる母、本人、弟の4人家族。母子のキス行為など過度な密着が放置される家族であった。高校に入学後昼夜逆転し、遅刻、欠席が増えた。夜中にパジャマで外出したり、車のタイヤを刺し、校門に「○○、死ね」と落書きし、父と口論の際に包丁を持ち出し警察沙汰になり、高校や家族は対応に苦慮した。うつ的気分も増強し「学校を辞めたい、自殺したい、お母さん一緒に死んで」などと言い危険が予測された。


4・治療経過:

 当院での多数の思春期症例(不登校・家庭内暴力・摂食障害・薬物乱用など)に対する内観療法の有効な経験を応用した。本例は、不登校や家庭内暴力の背景に精神分裂病、心的外傷と性格未熟があり、1回の集中内観療法では問題行動を消滅しえず、退院10数日後に再入院した。2回目の内観療法では、ゆったり内観や内観5問、さらに父母間と母子過保護を調整し、家庭内暴力と攻撃性が改善し、登校可能となった。5ヶ月後、進級後に学校で軽度の不適応が生じ、3回目の入院(10数日間)で3回目の集中内観を行ったが、以前より拒否や暴言はなく素直に取り組み、幻覚妄想はほぼ消失した。このような重篤例でも、3回の集中内観を含む様々な工夫や柔軟な対応により治療効果が認められた。家族療法的関わりとして、父が約1時間半かけて学校へ送迎したこと、母が自ら日記内観を受け子への愛情不足とわがままに気付き、夫婦仲の改善と父母役割の回復などが治療効果の面で重要であった。家庭での内観的しつけや学校での教室内内観の取り入れ、さらに早期の内観療法の採用が不登校、家庭内暴力の予防と解決に有効と考えられる。


 ※本文は、プライバシー保護の目的により、原文に一部変更を加えております。御了承下さい。

(治療前後における処方推移)

12年2月 外来   12年6月 第3回入院時 13年5月 外来通院中
100mg炭酸リチウム 3錠

200mgカルバマゼピン 3錠

3mgハロペリドール 3錠

25mgマレイン酸レボメプロマジン 
                3錠
1mg塩酸ビペリデン 3錠
        
   / 3×毎食後
2mgリスペリドン  3錠

200mg炭酸リチウム 3錠

0,75mgハロペリドール 3錠

25mgマレイン酸レボメプロマジン
                3錠
1mg塩酸ビペリデン  3錠

  /3×毎食後
2mgリスペリドン  4錠

200mg炭酸リチウム 4錠

5mgマレイン酸レボメプロマジン
                4錠
1mg塩酸ビペリデン  4錠

25mg塩酸プロメタジン 3錠

1,5mgハロペリドール 3錠

  /3×n