18.家庭内暴力を呈した症例への内観的関わり

札幌太田病院 急性期治療病棟
佐藤 昌史


はじめに:
 近年、核家族化、高学歴化などにより子供の取り巻く環境も変化している。それに伴い当院でも不登校、家庭内暴力といった若者の入院も増加している。 
 今回、不登校、暴力行為のために入院した中学生に対して、内観療法とスタッフが適切な家庭環境や適切な地域的役割として援助した結果、若干の成果が得られたので報告する。

症例:
 S君、10代半ば、男性、暴力行為、不登校により入院。中1の頃より暴力行為、恐喝があり、警察に保護されている。今回、学校の担任の先生の薦めで当院に受診するが、S君は入院に納得せず医療保護入院となる。S君は母と2人暮らしであり、母は2度の離婚歴がある。しつけに甘く、S君に友人のような接し方をしていた。実父、継父共にS君には関わりが薄かった。

初診と看護計画:
 診察時から暴力行為があったため、保護室へ入室。すぐに内観療法が開始される。スタッフは、根本の問題は家庭やとりまく地域的な環境にあると考え、スタッフの世代に応じて父親的、母親的、兄姉的といった関わりを持った。
 
経過:
 入院時すぐに集中内観療法が開始されたが、S君は横柄で、不穏な態度が目立った。看護スタッフは両親、兄姉的な関わりを開始する。内観は4日目以降、集中して行うことができ、母へは「母親が私を生んでここまで育ててきて本当に良かった…と思ってもらいたい」と思えるようになり、高校進学を目標に持つことができた。集中内観終了後、さらに新しい自分を発見できるよう内観日記を作成し、毎日振り返りができるよう関わった。看護スタッフは、両親的な関わりを継続しながら、S君が本来、家庭や学校で与えられるであろう役割を、院内で学習プログラムや配膳作業として取り入れた。

結果:
 
内観をすることにより自己を肯定することができ、他者に感謝や反省をするといった気持ちが芽生え、自己改革の必要性を自覚するのに至った。また、規則正しい生活や、学習を行う習慣が身に付き、本人の持っている素直で明るい面が伸びた。
 
考察:
 S君は、今まで「自分のことを他人はどう思っているのか」など他者本位的な自身の見方しかできなっかたが、内観3問を調べる事により、心の内側を観察することができた。内観3問の特性により、自己肯定、他者受容ができ、さらには誤っている自己像に気づき自己を修正することができた。
 S君は母親の2度の離婚、母子家庭による父親的役割の欠如、引っ越し、転校など生育歴やその取り巻く環境に問題があった。スタッフは適切な家庭環境に似たもの、または地域の人々が本来与えていた適切な環境的関わりを持つことによってS君にとって良い影響を与えるのではないかと考えた。この関わりは、思春期症例の人達にとって、健康な人生の生き方を示し、人生モデルの習得につながたのではないかと考える。

結論:
 
@家族歴、生育歴に問題のある症例に過去の心的外傷を回想し、それを癒すことで、自然な自己表現と他者受容が可能となる。A思春期の症例において、スタッフが適切な家庭環境や、地域的環境な役割を行い、それを体験することにより、受療者は人生モデルの学習、習得につながる。


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