15.家族愛に気付き自殺企図から立ち直った一例 ― 背景にあったいじめられ体験 ―
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1, はじめに 喪失体験の後に抑うつ気分、自殺企図が見られ入院したケースに対し内観療法を含む治療を行い、症状が改善し明らかな効果が得られました。また症状の背景には小学生時のいじめられ体験と不登校が存在していたことから、これら過去のストレスや心的外傷への内観療法の効果について考察したいと思います。 2, 症例 10代女性。子供たちには甘く友達のようであった父親と厳しい母親に育てられました。小学校高学年の時に「仲間外れにされる」、「言葉の暴力を受ける」等、同級生からいじめに遭い、それ以降不登校となりました。中学校はいじめを受けた同級生とは別の学校を希望し、両親と教育委員会の協力の下、別の学区の中学校に入学。しかし、まもなく不登校となりました。わずかの登校日数ではあったが中学を卒業後、その後高校に進学し、数ヶ月は順調に登校しました。しかし、特に理由もなく1年時の夏休み後から再び不登校となり中退しています。 その後、就職し勤務態度はまじめで良好でしたが、失恋を機に気分の落ち込みと共に不眠、食欲の低下、リストカットも出現しました。症状は徐々に悪化し自殺未遂をするまでに至り、家族に連れられ当院受診。初診時、入院を告げられると大声で泣き抵抗を示しましたが、医師や家族の説得により本人も納得し入院となっています。 3, 内観療法とその経過 入院3日後より内観を導入。いじめに遭い不登校となった時期の母に対しての内観では、「学校に行けないことを人のせいにし、甘えていた自分がいた」と、自らを振り返っています。また、他の家族に対しても「いつも自分を大切にしていてくれた」、「学校に行けない自分を見守っていてくれた」等、家族の愛情への気づきがありました。入院直前の家族に対しての内観からは、「自分が死ぬと言った時の母の気持ちが今になって分かった」と述べ、また、手に対する身体内観では、「自分を傷つけてはいけないことに気がつき、もう二度と自殺未遂はしない」と、これまでのリストカットについて振り返っています。そして、内観の後半では「家族からの愛情に感謝し、強い自分にならなければいけない」と、まとめていました。また、家族内観の折には涙ながらに内観中の記録を読む本人を前に、両親は「今までの本人の苦しみや痛みがよく分かった」と、話していました。 4, 考察 本例は入院時、抵抗を示していましたが、内観導入直後からは家族にかけた迷惑を詫び、また家族から受けた多くの愛情に感謝することができていた。また家族内観を行うことで、お互いの気持ちを確認し、より一層親子の絆が深まることとなったように思われます。その結果、過去にとらわれず前向きに物事を考えられるようになり、退院に至ったものであります。 本例において、今後人生の転換期を迎えた時に、内観体験が励みとなることを期待して、症例報告とします。 質問1,現在はどのような生活を送っているのですか? 答え 今は両親と同居し静養しながら通院しています。以前のように元の生活を送っているようです。 質問2,今回入院のきっかけとなった失恋という出来事は本人の中でどのように変わりましたか? 答え それまで、自分には頼りになるのは彼しかいないと彼に依存的だったのが、内観療法を受けたことによって、家族の大切さと愛情に気付き、それまで狭かった視野が広がり家族の大切さに気付くことができたようです。今回の失恋は彼女にとって家族の存在の大きさに気付くいいきっかけとなったのかもしれません。 ※プライバシー保護のため、文中の一部変更を行なっております。ご了承下さい 。 |
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