12.家族のきずなを見つめ直す
〜親子内観を通して〜


札幌太田病院 地域福祉部
川名 美保

 
 近年、不登校、家庭内暴力、リストカットなど、思春期の問題は多様化・増加の傾向にある。加えて、思春期に起こったさまざまな問題を、青年期にまで残すケースが増えている。
 今回は、思春期から始まった不登校、閉じこもり、家庭内暴力などの症状を青年期まで残し、内観療法や家族会などの家族療法的アプローチが、親子関係を見つめ直すきっかけとなった症例を報告する。


1,症例:
 A雄、20代後半、男性。幼少時より両親は不仲であり、子育てに関する両親の意見は、一致していなかった。父は仕事が忙しいことを理由に、子育てにあまり参加していなかった。母が過干渉的にA雄に接し、厳しく育てた。

2,内観療法とその経過:
 中学2年時、いじめをきっかけとし、不登校となる。そのころより、母に対する暴力行為や物にあたる行為が出現した。自室に閉じこもりの生活となり、徐々に『人の目が気になる』などの症状もみられるようになる。平成X年、物にあたる行為が頻回となり、加えて、父に対する暴力行為も出現。警察に対応してもらうことも、度々、みられるようになる。同年Y月、母が相談に来院。数日後、警察に伴われ、A雄が当院を受診。即日、入院となる。
 A雄には、入院1ヶ月後に、集中内観を施行。母も別の場所で集中内観を行い、その後、両親、A雄の3人で、家族内観を行った。内観療法により、A雄は、『周囲の人々が自分のことを心配してくれていたこと』、『両親に多大な迷惑をかけてきたこと』に気付き、母も、『A雄のことまで自分のように考えてきたこと』、『自分だけが頑張ってきたのではなく、周囲の人々に支えられていたこと』に気付いた。
 また、母は、A雄が入院当初より当院家族会に参加していた。内観前には、父やA雄を責める発言が多くみられたが、内観終了後より、他者を非難する発言が少なくなり、『良い母になろうと、周りを見ずに走ってきた』、『A雄には、あまり手をかけてないと思っていたが、実は、すごく手をかけていたことに気付いた』など、これまでのA雄への関わりを、客観的に見つめ直す発言がみられるようになってきている。

3,考察
 現在、A雄は本人の希望により、アパートで一人暮らしをしている。母は、時にA雄のもとを訪ね、生活を見守っている。A雄は、現在も内観日記を書いており、時折、それを見る母もまた、自分の内観を思い出しているといいう。
 一方、父との関係は、まだ、ギクシャクしているところを多く残している。それでも、家族会での母の発言から、母にそれぞれが相手の様子を尋ねてくるなど、お互いに関心を持ち、受け入れつつある様子がうかがえる。
 このように、内観療法や家族会を中心とした、家族療法的アプローチにより、家族がそれぞれに自分自身を見つめ直すことができた。今後も、内観での気付きを生かし、より良い親子関係を築けるよう期待したい。

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