9.心的外傷の背景を持つ分裂病患者の退院後の経過 ― 内観後の変化 ―
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1.はじめに
学校でのいじめ、親、兄弟からの暴力といった背景をもつ精神分裂病患者が内観療法を経験、退院後に社会復帰へ向けてデイケア通所をはじめ、適応をみせている症例を報告する。 2.症例 30代 男性 父、母、兄2人の5人家族。小中学校でいじめや不登校傾向、高校で引きこもり状態となる。飲酒時の父親や兄からの暴力、さらに希望しない大学への進学・中退などによる心的外傷があった。大学在学中に、独語、独笑をはじめとした奇異な行動が見られ、精神科にかかるが継続せず、暴力行為が出現しA病院に入院、その後数回の入退院を繰り返すが改善せず、幻覚、被害妄想が強まり、警察への執拗な訴えが頻繁になるなどのため当院へ転院、入院となった。 3.入院から現在までの経過 <集中内観> 入院11日目に内観へ導入、はじめは内観3問以外に過去の辛い体験を傾聴し、受容的に関わっていった。さらに家族を調べる事への抵抗を考え身体内観から導入し、内観を進めていった。その中ではやはり家族に対する陰性感情を示し、さらに自分の病気に対する辛い思いが溢れた。しかし、その思いを面接者に吐き出すことでカタルシス効果がみられ、徐々に落ち着き内観3問に沿って調べられるようになった。そして自分が病気であるということを言い訳にしていた事、家族への感謝の念などを自ら語り、認知の変化が見られた。 <退院から現在まで> 内観終了後は福祉関係の仕事に就くという目標を持ち、社会復帰へ向けて、共同住居への入居とデイケア通所が計画立てられた。入院3ヶ月後、病棟からデイケアへの試験通所が開始された。当初は新しい環境に慣れずに落ち着かず、デイケアに居るだけで精一杯といった様子であり、「早く家に戻りたい」といった訴えも聞かれていた。 入院後約半年間で退院となり、「規則正しい生活、社会復帰に繋がるよう、対人交流を促進すること」を目的とし、デイケア通所が開始された。 通所後は、主に同年代のメンバーと、良い仲間としての交流が増えていった。それに伴い、仲間との雑談の中で無表情だった患者の笑い声も聞かれるようになった。 そうした中で、興味を示さなかったデイケアのプログラムにも自ら見学に行くようになり、徐々に参加するプログラムも増え、今現在自分の興味を持てることを模索中である。また、自ら委員会にも入り活動し始めている。 現在もまだ幻聴などはあるが、他患へ危害を加えることもなく、仲間とふれあう中で現実を楽しんでいる。今後は、集団生活を送り、プログラムへの参加を通して自信をつけ、将来の具体的な目標を定めていくことが必要である。 ※プライバシー保護のため、文中の一部変更を行なっております。ご了承下さい 。 |