7.いじめを背景にした摂食障害の一例

札幌太田病院 山の手デイナイトケア
下田 妙子

 
【はじめに】

 いじめにより、不登校・食行動異常・希死念慮が表出した症例に対し、内観療法を中心とした入院治療を行った結果、症状が改善され、新たな友人関係の形成に至った事例の経過を報告する。


【症例(A子 高校生女子)】

 診断名は拒食症・食行動異常。両親・姉の四人家族。幼少時より、自家中毒による嘔吐あり。小学校四年生時、体重40s台後半(身長140p台)から10sダイエットをし、それ以後、肥る・痩せるという摂食を過剰に意識するようになった。
女子中学に入学後、友人の陰口が気になり、食欲減退、不眠症となる。その後、公立中学に転校するが、仲間はずれにあった。高校受験が迫ると過食し、家庭内暴力も出現した。3ヵ所のクリニックを受診するが改善せず、行かなくなった。高校入学後、過食・嘔吐し、罪悪感と不安感に苛まれて興奮状態となった。また、下剤による下痢が続き、新たにSクリニックを受診した。希死念慮・自殺念慮は消失したが、食欲減退は改善されず、身体的にも危険な状態が予測されたため、当院に転院となった。
入院後、即集中内観開始。テーマ「母に対する自分」を調べ、@自分は母親によく似ている、A今の自分が嫌いであり、似ている母親に対しても反発していた、B元来の自分を好きになることが幸せにつながる、などの気付きがあり、母・父・姉に対して感謝の気持ちが述べられた。内観終了後、両親が来院し、家族内観を行った。家族や病気に甘えていたこと、自己中心的であったことが本人から告げられると、母親も「娘に対して完璧を求めていたことに気付かされた」と述べた。退院後は毎日通学し、新しい友人もでき、食事摂取も改善されている、とのことであった。

【考察】
 本例では、いじめが引き金となり、食行動異常・希死念慮表出などの問題を呈し、さらに境界例という性格の病理が症状を促進させたと考えられる。内観時のレポートでは「母に甘えるのではなく、自分に自信を持つことが幸せにつながる」と書かれ、母子分離への兆しが見られた。友人を作ったことが、分離に対する孤独感や不安感を乗り越える手助けになったと思われる。また、いじめにより対人恐怖感が増幅した自分にとって、自信を持つことが重要であると気付いたのである。
内観療法が家族や友人への葛藤と向き合わせる事を可能とし、その結果、症状は消失し、新たな交友関係を形成するまでに至った。


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