5.虐待され家庭内暴力を呈し、精神分裂病を発病した症例
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1. はじめに:近年、メディアによって心の問題が取り上げられ、そのような心の問題を引き起こす様々な社会的問題にも焦点が当てられている。しかし、一方で人々はメディアの情報を“どこか自分には全く関係のない世界の話”と思っていないかという気になる。家庭内暴力が凄惨な虐待事件にまで発展するケースが目につく。家庭内暴力をする人々とされる人々の因果関係を調べた研究は膨大になるが、危険因子は特定することが出来ても、因果関係はまだ見いだされていない。つまり、これは誰でも虐待者、また被虐待者になり得ることを示唆している。いじめも同様である。
2.症例:Sさん 男性 30代 ・診断 精神分裂病 ・家族構成 父 母 兄 本人 妹 の5人家族 ・背景 幼少の頃より父親に暴力を受けて育つ。母いわく父が帰宅するとそれまでしていた遊びやテレビも途中で止め固まっていた。小学校、中学校で対人関係を上手に作れず、中学校ではいじめにあう。常に父に恨みを持ち続け、大学卒業後就職し約2年後退職、その後海外に留学し精神分裂病の症状が顕わになる。帰国後も“手首をよこせ”などの手紙を両親に送り実行、緊急措置入院となった。 3.入院中の経過:他害の恐れから1ヶ月間の保護室使用となり、その間日記を使っての記録内観を行った。そして保護室使用解除とほぼ同時に内観療法へ本格的に導入となった。さらには両親共に手稲の五十嵐内観道場にて内観してもらい、親子共々今までの人生を振り返り、親子・家族関係の歪みや間違いに気づいた。その後家族内観を行い、両者が共に詫び合い、今後の方針を話し合うなど新しい家族関係へ向かういい機会となり1か月後に退院となった。 4.考察:幼少より虐待を受け、その後も父親にひどい扱いを受け育った。母親はなるべく問題や夫の暴力を避け続けてきたので、家族間の問題に直面、解決しないできた。このようなことから患者の父への恨み、母への不信が育った。精神分裂病を発症した原因がこのような家庭環境に育ったからではないが、分裂病発症後の妄想の内容、行動は育ってきた家庭環境に原因があった。患者の分裂病症状には薬物療法を、恨みや憎しみに支配された人格(心的外傷)には内観療法を、そして両親自身も内観療法を受け、それぞれが自分自身の誤りに気づき、家族内観として家族療法を行ったことで、家族に良い転換の機会を与えることが出来た。患者本人も虐待・いじめられの経験があり、内観によって虐待してきた父親にもいじめられ経験があった。「私は、自ら育った家庭環境、成長期に受けたいじめ被害、人生の進路に対する父や家族の反対等によって培われた“屈辱感”から“人間不信”に陥りました。」と父親は内観の感想で言っている。このような事実は、いじめ・虐待がトラウマとして成人になった後も多大に影響すること、内観がいじめた、いじめられた経験を持つ人々に有功であることを示唆している。さらに内観がいじめの予防につながる可能性が高いことも意味している。 |