4.いじめとてんかん(小発作)が背景に見つかった 摂食障害症例
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1.はじめに:今回、いじめられ体験が心的外傷となり、食行動異常、多量服薬、リストカットなどを呈した20代女性に内観療法を行った。良好な経過を得られたので、若干の考察を加え報告する。
2.症例:A子。20代前半女性。無職。診断名は抑うつ、てんかん。父は単身赴任。母、弟との3人暮らし。小学時代は特に問題なく過ごすが、中学時に陰口を言われるなどのいじめにあう。高校入学後、クラスで孤立し、その後も机の中にゴミを入れられたり、シャープペンで背中を刺されたり、理由もなく暴力を振るわれるいじめを受けた。高校卒業後、就職するが体調不良から長続きせず交際していた男性とも別れ、安定剤を多量服薬し救急車で搬送された。その後、多量服薬やリストカットを繰り返し、H12年A精神科で心因反応と診断を受けた。しかし症状が改善せず、翌年インターネットで当院を知り受診し、入院となった。 3.内観療法の経過:「母に会いたい。不安です」と訴えたが、治療の必要性を説明し、入院翌日、内観療法導入となった。内観面接時も不安を訴えたが、「母に対する自分」では、「いじめられて辛かったが、母が話しを聞いてくれたので、何とか高校を卒業できた」と感謝の気持ちを述べた。一方、「何をするにも判断を委ねられた。良い子でいなくてはいけなかった」と母に陰性感情があった。内観の進行に応じ、自殺未遂でしか親の注目を集められなかった、病気を親のせいにしていた、などの気付きを述べ、自己客観視が可能となった。内観3日目「父に対する自分」の時、病棟内を徘徊し帰宅準備をする内観抵抗、さらに脳波異常(全汎性棘徐波結合)が見られ、精神運動発作と診断され抗てんかん剤が処方された。その後、精神状態を慎重に観察しつつ閉鎖病棟看護詰所近くの自室内の屏風にて再開した。その後、「自分は良い子と思っていたが、嘘をつき、物を盗み、いかに周囲の人や自分を傷つけたかを思い知った」と話された。次いで、父、弟、祖父母、養育費の計算、身体内観、再び母と進み、終了した。まとめのレポートには「自分は幸せだ。もう2度と自分を傷つけるようなことはしない」と書かれた。内観最終日、家族療法として家族内観を行った。母は「これは家族全体の問題だ」と反省し、ボディーワークでは母子共に声を掛け合う大切さを実感した。その後各種作業療法に参加し、入院期間14日目で退院となった。 4.予後:退院数ヵ月後の電話での調査では、過食嘔吐は軽減し、うつ症状、自傷行為は完全に消滅した。現在はてんかんの治療を継続して行っている。また、友人と旅行に出かけ、対人関係の回復も見られている。 5.考察:てんかん小発作による不適応といじめられ体験によって自信を喪失し、両親や友人・知人への不信感に広がり、食行動異常、自傷行為に及んだ。内観体験からA子は「愛されたいから食べた」ことに気付き、拒食症の時、食べると母が喜んでくれたことから過食が始まったことに気付いた。また、弟に母を取られた、もっと自分を見てもらいたい、と幼い頃からの満たされない思いに執着していた自分に気付いた。しかし内観で「自分も愛されていた」恩愛体験を認識し、まとめのレポートには「いつも私を思っていてくれてありがとう」と書かれた。弟に対しても不安定な時そばにいてくれたことを思い出し、この満たされなかった思いは消滅した。 本症例は、てんかん発作による不適応といじめによって自己と他者への認知が否定的となり、内観によって家族に対する長年の否定的認知性格が解消され、性格面の改善に至った。内観中の母との分離不安は、内観が進むに伴い解消された。また、自発的にいじめられ体験を面接者に話すこと、面接者が内観に加え外傷体験を積極的に拝聴するカウンセリング的対応によって、過去のいじめられ体験を受容できるようになり、心的外傷が解消される過程となった。その結果アイデンティティーの確立につながり、A子の人生転機になったと考えられる。併せて抗てんかん薬が奏効していたことも申し添える。 ※プライバシー保護のため、文中の一部変更を行なっております。ご了承下さい 。 |