3.いじめられ心的外傷から、ひきこもりを呈した 10代女性への内観療法
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1.はじめに:今回、いじめられ体験が背景にあり、不登校からひきこもりを呈した姉妹に対し、内観療法を含む入院治療を行った。現在、治療継続中の段階ではあるが、良好な経過を得たので、姉の内観療法を中心に報告する。
2.症例:Y子(10代後半)無職。診断名はひきこもり・幻覚妄想状態(精神分裂病?)。父・母・兄・妹など5〜7人家族。小学高学年時、リコーダーを金魚の水槽に入れられたり「死ね」と悪口を言われるなどのいじめにあった。中学入学後も、理由なく男子に顔を殴られたり、水を溜めた洗面台に顔を押されるなどのいじめは続いた。中学3年に幻聴を訴え、学校教諭の勧めで月に1〜2回A小児科医のカウンセリングを受けた。しかし、いじめから同級生に恨みを持ち、手足を自傷し、その血で「○○死ね」と壁に書いたり、不眠、不登校などでB精神科を受診した。服薬で症状は改善されず数ヵ月で中断し、更にC精神科にて入院治療を行うが復学できず退学となった。その後、洗濯、掃除など全て母にしてもらい、同時期に退学した妹と家にひきこもりとなった。イライラ感・被害妄想が表出し、将来を不安に思った母が相談に来院した。 3.内観療法の経過:入院に納得するが「家に帰りたい」と泣き出し、興奮もあり、情緒不安定であった。病室は妹と一緒にし、運動療法、音楽療法など各種作業療法に参加し、入院1カ月目で内観療法を開始した。内観1〜2日目の「母に対する自分」では「洋服を買ってもらった。参観日、運動会には必ず来てくれた」など具体的事実の想起が可能であった。一方、「今まで母に髪や体を洗ってもらっていた。これからは一人で風呂に入り、自立したい」と述べ、母子の過度な密着が伺えた。2〜3日目、テーマ「父に対する自分」の面接時「母同様、父にもあまえてばかりいた。悪いことは全て父のせいにしていた」と気付きを述べた。また、内観3問以外に辛く、悲しかったいじめられ体験を積極的に拝聴した。3〜4日目の「兄や姉妹に対する自分」では一緒に内観中の妹を気にかけ「私が妹の代りに買い物に行くことがあった。これからは家から出ない妹を自立させるため、妹に買い物に行かせます」と姉の立場からの言動が見られた。5日目の「足に対する自分」(身体内観)の面接では「いじめた子が驚くだろうと思い、自分の足にその子の名前をカッターで刻んだ。とても痛かった。これからは傷つけるようなことはしません」と反省した。6日目は「再度母に対する自分」を調べ、7日目は父母来院し家族内観を行い、泣く父に対し「今まで思ったことをあまり話さなかったが、これからは話すようにしたい」と述べ、コミュニケーションの回復とその大切さを実感していた。 4.考察:本例は、両親の過度な愛情による誤った養育に基づいた、脆弱な人格由来のいじめられ体験が心的外傷となり自我を弱め、不安やひきこもりや幻覚妄想を呈した。内観療法の面接では、病の治癒を祈る温かい心を礼拝で表し、内観3問に加えていじめられ体験を傾聴するなどカウンセリングを併用した。性別や年齢を思慮し、若い女性心理士が主に面接するなど受容的かつ柔軟的に接した。以上のような関わりは安心感を与え癒しとなり、薬物療法も併用し幻覚妄想は鎮静し、現実見当識が高められた。周囲からの恩愛体験を正しく認識することで「辛く悲しいことばかり ではなかった」と幸福感が現れ、前向きになり「昔のことは忘れ、これからは家事を手伝ったり、アルバイトをしたい」と決意を表明し、自立への契機になったと思われた。 5.今後の課題:親が自ら集中内観を受けたり、家族内観を行うなど家族療法的関わりは治療効果を上げる上で重要であるが、本例の場合、一度の家族内観では、家族全体の病気に対する認知を大きく変化させるまでに至らなかった。 今後、母の子への過度な密着に対する指導、修正やY子自身への自助グループ的関わりなどが必要であろう。 ※プライバシー保護のため、文中の一部変更を行なっております。ご了承下さい 。 |