1.いじめ・・・不登校による心的外傷---その症状推移と治療・予防

札幌太田病院 院長
太田耕平

 
 この25年間にわたり多数の思春期症例の診療にあたってきた。昭和55年頃はシンナー乱用、その後、いじめられ問題、次いで不登校、家庭内暴力、さらに摂食障害の著増を認めてきた。そして、この数年は引きこもり、リストカット、ついには17歳の凶悪事件が注日されている。上記の様にピークとなる問題行動は4〜5年ごとに推移し重症化しつつあるように思われる。
 これらの問題行動の背景や始まりに、しばしば 「いじめられ→不登校→退学」が認められ、この予防と早期解決がその青年の一生の為に極めて重要である。
この研究会の設立の目的もここにある。

  1. 過去25年間にわたりケースワーカーや心理士を複数名 採用し早期退院を促す工夫を継続し、そのため実際に効果ある治療法を求め実践してきた。
  2. 医師・患者の一対一治療関係 → 集団療法→ 患者会結成と支援→ 退院者の会→ 家族会→ 共同住宅→ 福祉ホーム→ →アパートで自立:退院促進の成功
  3. 医療職員の業務対象が個人→ 集団 → 患者会 → 家族会 → 家族療法 → 共同住居群 → デイケア・ナイトケア → 地域訪問活動 → 地域の1次・2次・3次予防活動の実践と成長した。この間、内観療法の高い有効性に支えられた。
  4. 長年の臨床事実として、次の疾病(問題行動)の経時的連続的発症がしばしば認められる。解決しないと年齢と共に重症化・重層化していく症例もあります。
    父・母の離婚(病死・事故死) → 転校(転居) → いじめられ(家族・学校) →
    イ)不登校 → 引きこもり → 家庭内暴力 → 抑うつ → 拒食・過食症 → 身体病
    ロ)不登校 → 夜間外出 → 非行 → シンナー・酒・覚醒剤乱用 → 反社会・犯罪
  5. ゆえに、早期にこの連鎖に気づき早期予防・早期治療が、次の不幸な問題の予防となる。幼児期の健全な家庭、父・母関係、親子関係の形成が重要。長年にわたり後遺症を残す「いじめと不登校」の予防と治療は極めて大切。
  6. 家庭教育・学校教育・社会教育の一体化、小・中・高校の一元化、心の教育の重要視、地域社会・職場に参加しつつ学ぶ教育が待たれる。
  7. 前記の経時的発症のどの段階でも、内観療法(記憶回想法)、家族療法は有効であり、短期間で確実な効果が期待できることが多い。
  8. 以上に述べた職員、治療・支援組織を持つ予防計画・治療計画が効率的な精神科医療・心身症医療の為には必要である。この目標の為には、
  9. 精神科医、心身医学専門医、臨床心理士の養成には古い学説の講義を減らし教育現場、臨床・福祉現場・行政の現場で実効ある実践活動教育が必須です。
  10. これら専門家の養成教育には臨床的・実践的活動の論文発表の義務化を要す。
 この25年間の臨床実践と作成した論文を振りかえり、当施設群が今感じている結論的なものを要約致しました。


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