いじめを背景にした家庭内暴力を伴った
不登校少年に対するアプローチ



札幌太田病院 医師
響 徹
第7回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会 抄録集:12-13,2004


 
1.はじめに

 いじめを背景に、次第に不登校となり、家庭内暴力を呈していた少年に対し、内観療法を含む入院治療を行った。内観療法と傾聴的関わりによって、認知の変化を促し、入院期間中に会議室ではあったが、父親と伴に登校するようになった一症例を報告する。


2.症例

 S君。10代後半。父母、母方祖母、2人の弟と6人家族。母はS君が幼少の頃から病弱で、子供に対して(特に長男であるS君に対して)過干渉であり、反面甘やかしていた。父親は母とは反対に、子供の教育は厳格で、しばしば子供の教育方針をめぐって、母親との対立が多かった。S君は小学生の頃、友人が少なく成績は中位であった。高校進学後、弟がしていてあこがれていたサッカー部に入部したが、先輩から暴力を受け退部した。その頃から「他の生徒は、中学校時代の仲間だけと仲良くして、中学校時代の仲間があまりいない自分は、何となく違和感を感じる。」と言って、不眠、不安、イライラなどの症状が出現してきた。高1の3学期より、腹痛など体調変化を訴え、学校にも行かなくなり、家で物を壁に投げつけたり、家族に暴言、暴力をふるうようになった。次第にひきこもりがちとなり、テレビゲームばかりするようになり、昼夜逆転の生活となっていった。
 
3.治療経過

 X年春母親に伴われ、札幌太田病院(当院)受診した。外来担当医が事情を聴き入院を勧めたが、S君も母親も入院を拒否した。数日後父親が相談に訪れ、外来担当医は内観体験者の体験談を聞いてもらい説得した。数週間後、夜父親からS君から暴力をふるわれ肋骨を骨折した旨の連絡が入った。暴力がエスカレートして、これ以上息子の暴力を抑えきれないとのことで、母親はしぶしぶではあったものの、当院にての治療を希望した。父親と伴に安全の為警官に付き添われて来院し、入院となった。その日は父親に病室で付き添ってもらったが、翌日再び父親に対し、暴言、暴力が始まった。直ちに閉鎖病棟に転棟の上、保護室に収容し、内観療法を開始した。傾聴的に接していったところ、次第に興奮もとれ、素直に自分の気持ちを表出できるようになっていった。自分の暴力に対する反省もみられ、内観終了時には、自分が間違ったことをしていたとの気づきが得られた。一般病室に移り、復学意志も出てきた為、高校の学年担任と連絡をとり、何度か父親同伴で、会議室ではあったが、登校を試みてみた。S君は復学することにどうするか揺れ動いていたが、その度に傾聴に努め、次第に復学する気持ちに変わっていった。その後経過良好にて、入院後約3週間で退院となった。


4.考察


 幼少の頃から母親が病弱で、しばしば両親の間で養育方針を巡るトラブルが多かった。S君は両親に対する不信感からわがままで自己中心的な傾向を有していたと考えられる。高校1年以降、次第に学業や交友関係がうまくいかなくなり、部活でいじめにあい、挫折感を抱いたことが今回の発症と何らかの関係があると考えられた。家庭内暴力をふるうまでになってしまったため、入院治療に踏み切り、内観療法と傾聴的関わりによって、暴力に対する反省が得られた。入院前約5ヶ月間の不登校状態に陥っていたため、退院後も両親、学校との連携を保ちつつ、支援を行っていく必要があると考えられる。

 ※プライバシー保護の点より、抄録の1部を変更しております。御了承下さい。



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