若者が心を閉ざしていく社会の改善に向けて

〜私達ができること〜

ハンノキ林の会 代表
賀根村 伸子
第7回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会 抄録集:10-11,2004


 
1.はじめに

 ハンノキ林の会は、不登校・ひきこもりなどで悩む青年とその家族の支援を中心に、平成13年4月から活動を続けてきました。主に、ひきこもりに悩む親からの電話相談や面談を経て、本人の話を聞いて、ひきこもりからの自立を援助してきました。ほとんどの青年たちは、対人不安からくる仕事上の悩みや、異性関係、親との確執などの悩みなどを話しながら、自らの進む方向を選択していってくれたと思います。


2.ハンノキ林の会の活動について

 <活動のきっかけ>
 私の娘2人がそれぞれ不登校をしたことがありました。特に上の子の時は、中学校卒業を控え、卒業後つまずいた時に、本人や親の不安に対応してくれる場所がありませんでした。それで、同じような立場の方とつながりたいという気持ちと、もっとかかわり合える地域にできたらという願いをもって、このハンノキ林の会をつくりました。

 <共に考える場として>
 不登校で、子どもが心を閉ざしがちな時には、心が安らぐ場所がなければ、心の整理がつかないので、周りとのコミュニケーションも上手くとれない。家庭でできることは、「無理しないこと。休んだっていいんだ。」と言ってあげられる家族があることを、いろいろな方法で伝えてあげることです。しかし、親の視点からは、学校に行かない我が子を目の当たりにして強い不安感に襲われて、子どもを何とかしなければならないと思うものです。そのことが、悪循環に陥りやすい要因となります。
 
@ 不登校してしまうことが悪いことではないということ
A 一人ひとりの心の整理の仕方と時間は違うけれど、家族との距離を再認識しながら、それを基礎に成長していくということ。

 この2つを常にしっかり分けて親や周囲の人は心の整理をすることです。そうすると、子どもが今何を考えているのか見えてきて、共感できる素晴らしい感性があることを知るのです。共に悩みながら、一緒にそこを探っていくことにより絆が深まってくるとともに、私達大人が生き方、生きる価値について、学ぶ機会となります。私自身が我が子の不登校や、この3年間に関わってきた子ども達や、お母さん方からたくさんのことを教えていただきました。集いは、具体的に子どもや学校などにどう関わったら良いかを学ぶとともに、そうしたことを理解する場でもあります。
 また、この活動を通して、親同士の話だけにとどまらず、ひきこもりや不登校を経験した人同士互いにもっている不安を言葉にすることで、ちょっと先に行った人が、今悩み真っ只中の人の不安を聴いて、アドバイスをしていることがあるのです。


3.相談事例

 【事例1】 20歳代の女性(母と弟4人の6人家族) -ひきこもり7年
 両親は、本人が中学校に入る頃離婚。管内から市内に移り住み、自分の容姿を気にするようになった。周りから自分が変に思われていると強く思うようになり、人に顔を見られるのを嫌い、家族の前でもマスクをはずせない。
 初回相談時、本人は、体をこわばらせ、人に付き添ってもらいようやく話が出来るといった感じだった。相談の9ヵ月程前、母と娘で保健所に行き、医師の面接相談を受け、即入院治療が必要ということで、6ヵ月程精神科に入院していた。規律を守れず、強制退院し、その後も通院していたが、摂食障害、薬物依存、自殺願望、妄想などの症状が続いていた。入院中に知り合った男性(40代)との結婚を希望していたが、生計を立てる方法を模索していた。

 【事例2】 10代半ばの男子(母と本人だけの母子家庭) -ひきこもり1年
 両親は幼児期に離婚。思春期に入ってから、自慰行為をしているのを母に見つかり、その後母からの要求を拒めなくなってしまった。中学校卒業後定時制高校に通っていたが、これが原因で通えなくなった。ほとんど外出出来ない。7〜10日ごとに本人からの電話がある。罪悪感で苦しんでいる。やめたいが、どう本人に言ったら良いか知りたい。


4.活動をしてきて思うこと


 どこまで悩む方達の支えになれるか自信もなく戸惑いつつも、これまで関わってきて思うことがあります。その一つとして、“援助する”とは、特別何かをしてあげるということではなく、相談者の心の不安をどう感じ付き合っていくかだと思います。それは、専門家でなければできないということではなく、私のように専門的知識がなくても、生きることについて悩んだ経験があり、生きる意味について考えたことがあれば、他者に共感し、思いを共有しようとすることで、何かに悩む人の心を落ち着かせることができます。
 各々の心を孤立させない社会を取り戻すには、自分が他者に日常どれほど関心を向けているかということが、基本的なことですが、問われているのだと思います。私自身、この会の活動を通して、少しずつですが実践していきたいと考えています。

 ※プライバシー保護の点より、抄録の1部を変更しております。御了承下さい。



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