障害はプレゼント

〜内観での気づき〜

T.N氏(20代女性)

第7回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会 抄録集:6-7,2004


 
 私は札幌太田病院に入職し、集中内観の経験により、自分の精神状態が落ち着き、少しばかりですが自信を持てるようになり、患者様と関わりながら日々の行動を振り返る毎日です。私には双子で知的障害者の姉がいます。私達は常に同じ学校、クラスでした。家族の誰かが障害をもった時、差別という無意識な偏見の目をもたれます。「養護の妹」としか呼ばれなかった過去も、今は私にとって必要な経験だったと思います。集中内観での気づきをここにまとめます。
 私の双子の姉は幼少時に髄膜炎になり、その後遺症のためにてんかん発作を起こすようになりました。学力も同年代子にはついていけず、知的障害者として認定を受けました。養護学級がなかったこと、てんかん発作時に私と一緒のほうが家族・先生が安心するなどの理由から、姉とは同じクラスでした。小学時は、いじめのネタを探している人が多く、養護は格好でした。集団の無視から始まり、呼び方も養護の妹と呼ばれ続けました。暴力はありませんでしたが、物を盗られるなど精神的な苦痛が毎日続いていました。母親にはどうしてもいじめを受けていると打ち明ける事が出来ず、家では明るい自分を演じ、学校では一切会話が出来ない状態になりました。このままでは自分が自分を傷つけてしまうのではないか、と思い「学校に行きたくない」と初めて母親に打ち明けました。誰が悪いわけではないのは分かっていても、この現状が自分をマイナスにしているのは明らかでした。母は涙を流し「お母さんが悪い」と謝りました。その涙を見たとき「母に教えなかったら、こんな思いをさせなかったのに」と後悔しました。それからは母親に弱音は吐かないと決め、いつもと変らぬ明るい自分を作っていく毎日でした。     
 中学校には養護学級があった為、姉とは違うクラスでしたがいじめは続きました。私は、この頃から、いじめの理由は何か、いじめる人は自分がいじめられるから怖くてそうするのか、客観的な思考を持つようになりました。いつかは自分の言動が人を傷つけたと気づく日が来ると思い、人の言葉に惑わされる事が少なくなりました。
 今までの人生で、私を大きく変えた出来事があります。養護学級の子が、普通学級の朝のホームルールに参加する日がありました。担任の偏見により、私のクラスには受け入れはありませんでした。
 隣のクラスで「養護が来た〜。みんな近寄ったら養護がうつるぞ」と大騒ぎしていました。その子は両耳に補聴器をつけ難聴で会話が困難でしたが、今まで見たことがないくらいの大粒の涙を流し私に言葉にならない助けを求めてきました。私は「人の心の痛みがわかる事は凄いことだな」と感じました。「私が強くなればいじめから守ることが出来る、皆に判って貰える契機になるかもしれない」と思い私の行動は変わったのです。いじめた人に言い返し、喧嘩までもするようになりました。誰もが好きで障害を持ったわけでなく、相手の立場にたち、障害者の気持ちを理解する事などを話し、喧嘩や言い合いを繰り返す度にクラスの人の意識が少しずつ変わりました。変わってはきましたが、残念ながら最後まで障害をについて理解できない人もいました。年月を経ていじめをしていた人の心境が、少しでも変わってくれていたら良いなと思っています。
 障害とは外見的に気づくものからそうでないものと様々ですが、隠す必要など全くありません。障害はその人にとって貴重な経験であり、神様が『この人なら、障害をもっても大丈夫。乗り越えられるからプレゼントしてくれたものである』と本で読んだことを今でも覚えています。障害者の家族も同じ事が言えます。姉が居なかったら、障害者のことを勉強せず痛みもわからなかったと思います。
 入職し、集中内観を経験して、仕事やプライベートでも精神的な余裕が出てきました。一言で言うと、どのようなことも楽しんで取り組める様になったのです。一日一つでも小さなことで成長できるきっかけが沢山あり、教えてもらえる事はとても幸せと感じています。当院では病棟内・内観療法を中心とした治療を行い、殆どの職員が内観を経験している為、患者様の内観前後の心境の変化を捉えることが可能です。気づいた事に共感し、自分に置き換えて考えることで、逆に励まされたり学んだりの毎日です。入職時は精神・肉体的に辛く、病気になりやすい時期もありましたが、現在は日々楽しく仕事をさせて頂き、病気にもならなくなり、心身共に健康になりました。私にとっての集中内観は、過去の自分の行動を振り返り、現在の自分の性格に至る過程を見つめなおし、その時の気持ちと現在の心境の変化を比較しながら成長点を見つけ、今後どうしていくべきかを考える良い機会だったと思います。人は自分の欠点を含め目に見える障害や見えない障害、精神的な障害までみんな持っていると思いますが、それを自分へのプレゼントだと思って前向きに考える事を望みます。又、この発表を聞いた方が、少しでも心の重荷が減り楽しい人生になることを願いたいと思います。


※プライバシー保護の点より、抄録を1部変更しております。御了承下さい。


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