微小脳障害(Minimal brain dysfunction)といじめ


脳神経外科・心療内科 北見クリニック
北見公一
第4回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会抄録集:10,2002


  
 微小脳障害(Minimal brain dysfunction,MBD)は1959年Pasamanickによって「微小脳損傷 Minimal brain damage」として,脳損傷を基盤とした学習や記憶の障害を示す小児の病態を説明する用語として提唱された。その後1960年代には微小脳障害(微細脳機能障害ともいう)として用語が統一された。同じ1960年代に学習障害(Learning disability,LD)の用語が主に教育の分野から用いられるようになり,現在ではアメリカ精神医学会の疾病分類であるDSM-VからADHD(Attention deficit hyperactivity disorder)という言葉が用いられている。これらの違いを一言で言えば,MBDは医学的観点から見た学習障害の病態であり,LDは教育の分野での用語,ADHDは精神病理から定義したMBDの側面である。このMBD児にいじめが多く発生しているという報告がある。演者はいじめに関しては素人であるため,いじめの原因になりやすいMBDの脳神経外科的に見た病態について報告する。米国障害児障害者の会による定義(1966年)では、MBDとはほぼ平均的あるいはそれ以上の知的水準にありながら,中枢神経機能の軽微な障害によって,学習障害や特有の行動異常を示す子供たちのこととされる。星野ら(参考文献1)によれば50例のMDB児のうち43例に何らかの情緒障害を認め,いじめ,仲間はずれなどの発生も多かったという。脳波上異常波を認めるものは35〜95%まで報告によりまちまちであるが,異常の報告が多い。器質脳障害としてMBDを見た場合,原因として周産期異常,頭部外傷,脳炎・髄膜炎後遺症,てんかん,各種中毒,栄養障害,その他の神経疾患が知られており,演者も乳幼児虐待症候群ではCT上全般的な脳萎縮を示すことを経験している。MRIで白質のミエリン化の著明な遅滞が捉えられたとの報告もある。このMBDという疾患概念は心理的な症状と脳損傷との境界を捉えるものとして注目される。


参考文献1:
 星野仁彦,八島祐子,熊代 永:学習障害・MBDの臨床 新興医学出版社1992;94-107.







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