ひきこもり青年への作業療法
―デイケアにおける試み―


札幌太田病院 心理士   平山 崇
第4回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会抄録集:7,2002


 
 
1. はじめに:
 文部科学省の調査では、昨年度の「不登校」が長期欠席者数を占める割合は61%で、不登校者数も過去最高である。思春期の不登校が成人後も引きこもりという形で持続するケースも多い。今回、引きこもりの青年がデイケアへの参加で無気力感から回復し、仲間を作り、さらに将来への展望を見つめるに至った症例を報告する。

2. 症例
 A氏 20代前半 男性 高卒。 診断名/うつ状態
 両親、姉と同居。子供のときから協調性に欠けており、10代前半にいじめにあう。人間関係に悩み、10代半ばから不登校となる。心療内科に通院するが改善しない。この時期にアトピー性皮膚炎がひどくなる。数年間不登校が続いた後両親の促しで通学を始めたが、遅刻が多く授業中も寝てばかりだった。劣等感が高まる中、空手を始めストレスを発散した。高校卒業後、無気力感が強く、進学も就職もせず家で過ごしていたが、空手道場には通っていた。父の転勤で本州から札幌へ引っ越し、当院を訪れる。

3.経過
 通院から数ヵ月、主治医より第3デイケア通所を勧められる。プログラム活動では空手、ボクササイズに積極的で、その他は主に漢字教室と就職委員会に参加する。対人交流については、格闘技を話題に他メンバーと話をする光景がよく見られる。デイケアが終わった後は図書館で勉強し、夜は空手に励んでいる。このような活動で精神的に満たされた結果、皮膚炎も軽症化した。A氏は将来について全く考えられない状態を抜け出して、
現在、進学か就職への意欲を見せている。
4.考察
 人間が不適応状態にあるとき環境を変えると好転する場合がある。A氏は、自分のいじめられ体験や不登校を知る人は札幌にいないから精神的に楽、と語っている。その安定感を土台にしてデイケアに通い始めた。対人関係の苦手なA氏だが、格闘技系のプログラム活動を通して仲間を作ることができた。さらに学力をつけようと漢字教室に加わり、将来のことを考えるために就職委員会に参加した。デイケア通所により、A氏は無為に流れていた日々を有意義なものに変え、将来を展望するに至った。しかしながらA氏は、いじめや引きこもりの過去を想起し夜寝付けなくなるという問題を抱えている。過去をいかに納得して受け入れるかは今後の課題である。ともあれ、引きこもりを余儀なくされていた青年が意欲的な生活を取り戻す場所として、デイケアは今後益々活用されていくと思われる。




メニュー画面へ