不登校後遺症における家族のつながりについて
〜家族内観の効果、背中の暖かさを知ったとき〜

札幌太田病院  看護師
磯野 章、小田島 早苗

第4回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会抄録集:5,2002


 

はじめに:
 近年、不登校・家庭内暴力といった思春期の症例が当院でも増加している。今回、不登校が原因による無気力・人生目標の欠如した症例に対し内観療法を導入した結果その背景にはいかに家族・家庭の役割の重要性が大事か気付き、家族との信頼関係の改善、自己像の修正、人生目標を持てるようになった事例をここに報告する。

症例:
 S氏 20代半ば、男性。10代前半の時、特に理由もなく学校を休みがちになる。その後、父親の仕事上A市に転居するが、不登校は続いた。進学後、運動部に入部。しかし、「試合に負けたのはおまえの責任」と攻められ中退。アルバイトを転々としながら専門学校卒業し、大学受験か就職かで悩むようになるが大学受験に対しては父親に反対される。その頃より父親との関係が悪くなり、飲酒量増量・自殺企図出現し、病院も転々、仕事をしても続かずすぐに解雇となり、生活も不規則になる。

経過:
 医療保護入院となったS氏は、入院に納得せず当初、興奮・暴力行為が見られた。内観導入も横柄な態度やふてくされた表情をみせ内観には拒否的だった。そこで、スタッフは受容的な態度で接し、本人の言う不平不満・要望を傾聴していきながら信頼関係・環境の改善に努め記録内観形式で内観継続を促していった。内観開始4日目徐々に身体内観について考えるようになり「自分の体を大事にしたい」という言葉が聞かれた。その後、集中内観に切り替え内観を継続。内観を通して自己像を修正することが出来た。

結果:
 内観終了後、人生目標に向かって日々努力するようになったが、家族との信頼関係がまだ改善されておらず家族内観を導入。
その結果、親に対する甘え(耐性欠如)に気付き父親に対しても感謝の気持ちを表現し「安心させたい」という言葉も聴かれるようになった。

考察:
 S氏は、集中内観で人生目標を。家族内観で信頼関係の改善を図り内観を通してしっかりとした自己像を確立することが出来た。しかし、S氏だけではなく家族の協力なしでは改善されたとはいえない。そこで、家族も交え内観を行うことで個々それぞれを修正し、将来の目標を設定できたといえる。内観療法は、家族の役割・重要性を認知し適切な家庭環境に導く手段として有効であり、最も意味があるものといえる。




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