いじめ・不登校による心的外傷 --- その心身後遺症推移と治療・予防

・・・次の世代に引き継がせないために・・・


札幌太田病院 院長
太田耕平
第4回北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会抄録集:1,2002


 
 多数の思春期症例の診療にあたってきた。昭和55年頃はシンナー乱用、いじめられ、次いで不登校、家庭内暴力、さらに摂食障害の著増と推移した。この数年は引きこもり、リストカット、ついには17歳の凶悪事件が注目された。これらの問題行動のピークは4〜5年ごとに変化し互いに因果関係を有し重層化、重症化しやすい。親子間に葛藤を有し、家族療法の併用(多軸診断と多軸治療支援)が有効かつ必要であった。
 これらの問題行動の背景や開始に、しばしば「いじめられ→不登校→退学→不適応」に伴う心的外傷が認められる。この予防と早期解決がその後の摂食障害など心身症や各種不適応の1次・2次・3次予防に極めて重要である。ライフ・サイクルに応じた健全な人格成長を促す上からも重要である。

 
@ 過去の25年間にわたりケースワーカーや心理士、内観指導者によるチーム医療を目指し、有効性を高める治療プログラム(内観法)の工夫・改善に勤めた。この間、病棟内・内観療法について適応方法の工夫改善を研究し、その成果に支えられた。

A 医師対患者の治療関係→多軸診断に基づく治療チーム対患者・家族→集団療法(含む家族内観)→患者会(アルコール症、摂食障害、etc)結成と支援→退院者の会→家族会→共同住居群→デイ・ナイトケア→福祉ホーム→アパートで自立支援→地域訪問活動→1次・2次・3次予防(内観懇話会、いじめ問題研究会の設立)と成長した。

B 長年の臨床経験において、下記の疾病(問題行動)の経時的連鎖的発症を、しばしば認め、早期に解決しないと経時的に複雑化・重症化・重層化していく。即ち、父・母の離婚(病死・事故死)→転校(転居)→いじめられ(家族・学校)→拒過食→ 
イ)不登校→引きこもり→家庭内暴力→抑うつ→拒食・過食症→身体病→精神障害
ロ)不登校→非行→シンナー・酒・覚醒剤乱用→不眠・多剤依存→非社会・反社会・犯罪性

C ゆえに早期にこの連鎖を警戒し、早期予防・治療が次の不幸な問題の発生予防となる。幼児期の健全な家庭、父・母関係、親子関係の関係の形成が予防上重要である。中年まで後遺症を残す「いじめと不登校」の予防と治療の重要性に啓蒙を要す。

D 「いじめと不登校」の予防と早期治療のために、家庭教育・学校教育・社会教育の一体化、小・中・高校の一元化、心の教育の充実、生徒・学生・教師が地域社会・職場に参加しつつ学ぶ、教育改革が急がれる。

E 前記の連鎖的発症のどの段階でも、正しい内観療法(記憶回想療法)と家族療法は短期間で確実な効果が期待できることが多い。早期の普及・実践が待たれる。

F 教員、精神科医、心身医学専門医、臨床心理士、教員の養成には旧学説の講義は縮小し、社会現場、臨床・福祉現場・行政の現場で実践活動を教育し評価が必要です。

G これら専門家の養成には臨床的・実践的活動を通しての自己評価・他者評価を要し、研究と論文発表を義務化すべきです。

H 英国、ドイツ、米国などでは不登校児に現実的で厳しい登校促進対策を持ち、不登校児の親から罰金徴収するなどの対策をする意味を、我が国においても再認識すべきである。





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