不登校と家庭内暴力の予防と治療


札幌太田病院  太田耕平

札幌西ロータリークラブ会報、Vol 40、No 1974、2000
(平成12年7月11日卓話より)


 
 17歳を中心とする少年の凶悪事件が注目されている。これらに関する新聞報道や論説も当然のことながら増加している。

・河合隼雄(日本臨床心理士会々長)
 欧米人の個人主義は長い歴史を持つが、キリスト教の神の目があるために利己主義になることは回避できている。キリスト教抜きで輸入した個人主義は通用するだろうか。このことは現在の日本人が利己主義になりすぎることと関係していないだろうか。自然科学の著しい発展、それは個々人が自分の宗教性を深め見いだすべきであろう。(産経 夕刊 2月12日「個人」時代の宗教性)  

・寺島実郎(三井物産戦略研究所長)
 戦後日本は「子供の社会化」に失敗した極端な例であろう。教養教育では、我々が歴史のいかなる地点に立つか、何が課題か、という問題意識である。徴兵制のない国だからこそ、若者も、全ての大人も、地域活動、福祉支援、国際協力など公的目的性の高いものに参画すべきである。皆で貢献する「公による制御」に若者を招き入れることが社会の安定に不可欠である。(毎日新聞 7月9日 「私生活主義」との決別を:荒れる17歳)

・藤原新也(写真家、作家)
 少年犯罪に共通しているのは、うんざりする程のワンパターン「父親(父性)の不在」であった。孤立した母親が、犯罪報道の後に、一層、子を庇護すべく過剰に干渉しはじめ、すなわち犯罪報道が覚醒をもたらさず、子供たちを刺激して、むしろ事態を進化させている。父性の不在を家族問題としてでなく、企業が担う厚生問題として対処すべき時期である。(日経 6月18日 父のいない光景)

・景山任佐(東京工業大学教授―犯罪精神医学専攻)
 日本の若者の家庭・学校内暴力やいじめ攻撃の対象は、親や教師から学童や弱者に向かう傾向にある。この量的・質的変化に注目すべきである。現代の若者は「空虚な自己」であり、その犯罪は古典的な「生活型」から「遊び型」、さらに今日の「自己確認型」へ移行しつつある。少年法も変化に的確に対応させるべきである。我が国ではこれらの研究者、実務家が不足し人材育成が求められる。



不登校と家庭内暴力の予防―反省のための三問

 3歳時の頃から、玩具や人形に対して、イ)してもらったこと、ロ)してお返ししたこと、ハ)迷惑心配かけたこと、−この三問について、反省と自覚を求めること。また、父母、家族同士に対して、自分のイ)・ロ)・ハ)を調べることを一日一回なり一週に一回個人や家族みんなでやること(家族内観)。
 イ)人形で遊んでもらった、ロ)汚れを拭いてあげた、片付けてあげた、ハ)乱暴に扱った、壊してしまった、などが気づかれ、人に対して感謝や思いやりの気持ちが形成される。
 幼稚園、小、中、高校のホームルームでも、朝に先生から「今日一日、これから友人や先生から、イ)してもらったこと、ロ)して上げたこと、ハ)心配迷惑かけたこと、を意識して過ごして下さい」とお願いします。そして、放課後になるときに、生徒一人ひとりから簡単に話してもらいます。これをホームルーム内観といい、継続すると、いじめや暴力の減少・消失となり、楽しい団結心のあるクラスになると言われている。


 ・家庭内暴力の特徴(江幡)

  1)外では良い子で特に問題なく見える。
  2)乱暴が母だけ(父だけ)に向くなど、背景に親子関係の問題を予測しうる。
  3)比較的に勉強のできる子であることも多い。
  4)非行的要件が外では認められない。

 ・家庭内暴力の特徴(清水)

  1)普段はおとなしい、いい子で、近所の評判はない。
  2)内面と外面が豹変する。
  3)父親よりも母親に暴力を加えることが多い。
  4)兄弟にはあまり手をださない。家財や器物破損がひどい。
  5)ノイローゼ、精神病、不登校などを認めない。
  6)原因は全て親子関係のひずみに還元される。

 ・家庭内暴力の分類(青少年白書)

  1)家庭内暴力のみ
  2)家庭内暴力+不登校
  3)家庭内暴力+不登校+非行
  4)家庭内暴力+非行

 ・家庭内暴力の分類(全国少年補導センター)

  1)純     型:家庭内のみで暴力をふるうのみ
  2)不登校  型:不登校と暴力が合併したもの
  3)混 合   型:金品の持ち出し、万引き、無断外泊などが、
            不登校、暴力に合併す
  4)非行先行型:暴走族加入、不良交友、恐喝などが先行
  5)境 界  型:精神病と診断しにくいが、うつ病または初期
          分裂病の合併が疑わしい