背景に高機能広汎性発達障害の存在が考えられた重症難治性神経性食思不振症の1例

医療法人耕仁会 札幌太田病院

太田健介



始めに

 本邦でも発達障害を背景に様々な精神疾患を呈する“重ね着症候群”が指摘され、摂食障害の背景に発達障害を認める症例も報告されている。今回、我々は、WAIS-IIIにて高機能広汎性発達障害に典型的な所見を認めた重症難治性神経性食思不振症の1例を経験したので報告する。

 

症例

30歳代後半、女性。20歳代前半(X-16年)に拒食が出現。その後、拒食と過食嘔吐を繰り返すようになった。X-8年より極端な低体重のため内科病院入院を繰り返した。X-4年、20kg近くに体重低下し、精神科や心療内科病院にて数度の入院治療を受けた。X-3年に当院を初診し、入院。40kg強にて退院。その後、X-1年頃より30kg代前半で経過し、低栄養に伴う腸管運動麻痺などのため入院を繰り返した。X年に当院に再入院。入院中は他患者との交流は少なく、治療者には優等生的な内容を一方的に話すことが多かった。強迫症状の合併は認めなかった。BMI 19kg/u(入院時14)迄改善し、同年退院した。

 

WAIS-III結果

体重回復後に行ったWAIS-IIIでは、FIQ78VIQ67PIQ95)とVIQPIQに有意差を認めた。更に、言語性下位検査では、数唱など作動記憶に比し理解が有意に低かった。また、動作性下位検査では、積木が高く、符号が低かった。

 

考察

摂食障害では、低体重時に認知機能障害が伴うことが知られ、体重回復後も完全には回復しないとも言われているが、本症例のWAISIIIの所見は自閉症者に特有のプロフィールと一致しており、長年の重篤な摂食障害の背景として高機能広汎性発達障害を有した可能性が考えられた。社会性の障害や理解の低さは、認知行動療法などの治療や持続的回復に必要な社会参加の阻害要因になると考えられる。以上より、摂食障害の治療に際しては、WAIS-III などで認知機能の評価を行うことが望ましいと考える。