集中内観療法と絵画療法
〜ピカソの絵による内観心性の診断と治療〜


医療法人耕仁会 札幌太田病院 院長
太田 耕平

平成11年度 医療法人耕仁会職員学術研修発表会論文集:p195、1999
(第2回 内観に関する医学研究会 抄録集、1999)



1.はじめに

 不登校の内観療法による治療の成果は、15年前から報告してきた。1993年、不登校 状態の小学校2年生に、内観治療の前後に自由画を描いてもらった。その一枚の絵に、 右から内観前、内観中、内観後の、自分の心理変化を順に3人の表情の変化として描か れていた。これはピカソの絵によく見られる構成であり、驚きと共に著しい共感を覚え 、あらためてピカソの画集を調べてみた。
 集中内観による心身の変化は言葉で表現できない情緒的な面もあり、絵画療法の中で 表現されることも多い。民族や国家を越えた普遍的心性であろう。

2.ピカソの絵に見る、心の発達段階

 内観療法では、幼児期からの記憶を回想することが重要である。ピカソの絵には、乳 幼児から青年期、さらに晩年までの人間の心の成長や、親や親しい人々との心の交流の 発達が詳しく描かれている。さらに、各世代での心的発達課題と、これにまつわる葛藤 もたくみに描かれている。
 心の歴史と発達の大切さ、人々の心の交流のあり方の大切さ、これらを長年にわたっ て絵の対象にしてきたと思われる。心の内面の成長や、葛藤の説明、了解にも利用しや すい。禅の十牛図の第8図「人牛倶忘」に類似の絵もある。

3.ミューズ

 心的抵抗を排除し自分を分析し、洞察、再統合する。芸術や文芸の神である「ミューズ」 と名付けられた絵では、指は7本描かれている。絵をよく見ると、7通り以上の多面的な 自分を分析している姿を示している。
 1.そこに座って絵を描こうとしている自分
 2.鏡に映っている自分
 3.それを見て描く自分
 4.描かれている自分
 5.うまく描かれているか否か、評価する自分
 6.鏡に映らない後ろ姿の自分
 7.右側にいる女性(二人)からみた自分
 8.男性性機能からの自分
 9.この絵を見る第三者から見た自分
10.キャンバス、絵の具とか座布団を用意した社会的視点からの自分

など、これだけで9種の項目で自分をチェックしている。

4.仮称ピカソ・ロールシャッハテストとピカソ画療法

 ピカソ画集から数枚の比較的わかりやすい絵を選び、外来などに常備してある。患者・家 族に提示し、絵に登場する人物像やその人の気持ち、人間関係などを語ってもらう。家族に も協力してもらい、家族の判断力やさらに相互の協力関係なども判断し得る。
 1.気楽で楽しい雰囲気で、2.内容の記録はごく簡潔とし、3.患者・家族の人間観、人間関 係の洞察、自己像の投影に有意であり、4.従来の投影法では得られない具体的な表層、深層 の心的葛藤が表現されやすい、5.特に内観的心性や、人格の発達レベルの判定に有意義であ る。

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