登校拒否と内観療法
     

札幌太田病院長 太田耕平

不登校
センターだより No.149
北海道立精神衛生センター

昭和63年4月1日発行
(第228回 定例事例研究会における講演)

はじめに

近年、新患外来では思春期症例が増加し、昭和60年度1年間で175例にのぼる。
 その内訳は、シンナー乱用82例、登校拒否24例、抑うつ神経症18例、分裂病9例、性格障害+心因反応8例などと続き、全新患の約2割に相当する。これらの思春期症例は多少なりとも不登校状態を生じやすく、狭義の登校拒否と鑑別を要する一方治療の効果を上げるには思春期一般への幅広い対応、治療、教育、援助を要するのである。
 思春期症例の共通点:神経症、分裂病などと部分的には重なる症状の思春期不適応の背景に共通して見られるのは、自信欠乏、自己同一化障害、耐性欠如(我慢できない)、生活又は人生目標意識の欠如、親子の信頼関係欠如などが認められる。この背景として親からの愛情としつけの不適切さが十分に伺われる。登校拒否のみならず、より広い思春期不適応に内観療法は有効と考えている。


登校拒否児の問題点と対応
  1. 親の誤ったあり方→親の内観とカウンセリング
  2. 親子関係の歪み→親子同時内観
  3. 子の性格形成の歪み→子の内観とカウンセリング
  4. 「いじめ」など学校の問題→教師の協力要請
  5. 教師、友人との不仲→内観や調整
  6. 学業成績の低下→院内での学習指導など
  7. 将来への目的意識の喪失→カウンセリング
 これらの他に各種心理テスト等による問題点の把握や、箱庭療法、スポーツを通しての自信回復も重要である。
内観療法:不登校児のうち暴力傾向又は母子分離が極めて悪い症例などでは入院内観を行い、小学低学年の例では自宅内観から始める。内観は適応症例のみに行う。当院の内観療法はアルコール症に対し昭和49年から開始した。
 入院期間は7〜21日間の予定表に従い記録内観のかたちで行っている。昭和62年1年間の内観施行例はシンナー・非行41例、アルコール症19例、登校拒否7例などで思春期例が57例を占め、計81例である。
 家族療法としての内観療法:患児の入院内観中は親自身も自宅で内観することを指導し、その後親子同時内観により一晩一緒に寝食を共にすることにより、親自身の自覚、反省、さらに親子関係の改善につながる。交流分析のボディ・ワークも親子間にとり入れている。一方、親へのカウンセリングや親の会を結成し、親への援助が患児の治療効果上重要なことを経験している。
 結語:一例一例が我々の学習であり、貴重な体験のなかから内観をも含めた家族療法的接近の有効性を確認しつつある。単に不登校を治すのではなく、患児の性格改善、人生観や人生目標にも好ましい影響を与える必要を痛感している。これらの症例を通じて、なぜ不登校やさらに非行などが生じるのかの発達心理上の関心が深まり、この経験が大人のアルコール依存や覚醒剤乱用者を理解する上で大いに役立ったことに感謝している。