精神科患者の早期退院のための工夫と在宅支援
−外来看護婦の役割−

医療法人耕仁会 札幌太田病院 外来婦長 落合雅子
総看護長 原田良一
地域医療部長 酒井佳子

外来看護 新時代 Vol 4, No.3 :p81〜92,1999


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はじめに

 高齢社会化と医療保険改革が進むなか、これからの精神科医療に求められるのは、 従来の入院中心の治療・看護から精神障害者の社会復帰への促進と、地域で定着した生活をサポートする 地域支援へと転換することである。
 当院は、1983(昭和53)年に初の精神障害者共同住宅を開設し、現在までに7施設(定員55人)と 精神障害者福祉ホーム(定員14人)の定員計69人がソーシャルワーカー(Psychiatric Sociol Worker:PSW/以下PSW) と外来看護婦、さらにディケア(T、U大規模計140人)のサポートを受け、地域で生活している。
 クリティカルカルパスの導入や在院日数の短縮がコスト削減に大きな効果があると言われ、当院でも本格的導入へ 取り組みつつあり、標準化した治療、看護プログラムにより方向性を明確にし、チーム医療として展開している。 当院アルコール病棟の平均在院日数は1996(平成8)年度で58.5日、精神科急性期治療病棟Bを届け出た 1997(平成9)年度が50.8日と、入院期間を短縮した。当院の精神科の全病棟を含めると平均在院日数は 131.4日と、1997年の全国の精神科病院の平均在院日数の「452.3日」1)に比べても著しく短縮している。
 これにより、外来看護も従来より柔軟で多様な対応が求められるようになった。 精神科専門外来(アルコール、青年期、老人など)としての機能や、院内や地域の治療資源の活用など 札幌太田病院関連施設の調整窓口として、外来看護の視点から紹介を試みる。

1.当院の外来システムの概要

 当院は、1943(昭和18)年に民間病院として開設され、55年の歴史を持つ。
 耕仁会札幌太田病院精神科・心療内科外来機能体系(図)に示すように、外来は、@関連施設の調整窓口として機能し、 A入退院調整の中心的役割を担っている。外来スタッフは平均5.5人(看護婦3人、パート3人、クラーク1人)で、 外来事務室1、診察室4、処置室1の精神科担当医2〜3人、内科担当医1人体制で、平日の救急入院にも 応需している。日曜、休日も輪番制救急外来を受け持っていて、各種内科検査などの受付けと準備、介助も行っている。
 外来通院者数をみると、1993(平成5)年度の23,977人に対し1996(平成8)年度は30,375人、1997(平制9)年度は 31,644人と増加傾向にある。1997(平成9)年度は、新患981人、再診が30,663人の合計31,663人で、 そのうち639人が入院している。1日平均100〜110人の外来患者に対応しながら、病棟やディケア、 訪問看護ステーションや関連施設との連携など多くの業務を行っている。
 外来の1日の流れは、朝のミーティングで始まり、5病棟の空床数を病棟からのFAXで確認し、 入院予定者、外来予約者、退院者の確認(病棟から退院サマリー活用)をする。 また、共同住居や福祉ホーム入居者、近隣アパート単身者、ディケア通所者などの問題点と支援調整 についての情報交換を外来スタッフと外来担当PSW、時に担当医を交えて行っている。 近隣アパートでの単身生活者の外来受診は、曜日別受診カードで確認している。
 入院者の受け入れは、病状に応じて外来と5病棟が連携しベットコントロールする。 退院者は、その後外来につながるため、外来看護婦が病棟訪問を行っている。 業務終了時にその日のまとめをし、明日の外来看護の組み立てをしている。また、退院後の通院状況 やディケアの利用状況を調査し、通院中断者をリストアップして、受診を勧めたり訪問看護を 依頼したりしている。最近では、道外から当院のホームページで治療内容を知り、 入院治療を望むケースもある。

耕仁会 札幌太田病院
精神科・心療内科外来機能体系


2.早期退院への具体的援助について

1)精神科専門外来としての機能
 まず専門外来として、病状や年齢により個別の対応を行う。「不登校」、「思春期症」、「食行動異常」、「アルコール依存症」、 「薬物依存症」、「精神分裂病」、「躁うつ病」、「中年危機」、「抑うつ」、 「高齢者」など、多様な病態に応じて資料を提供する。PSWが生活史、病歴情報と要望を聴取し、 患者や家族の多面的ニーズに応える外来医療に取り組んでいる。
 新患では、まず病状とその背景にある家族関係や成長過程の問題、喪失体験、心的外傷などの情報収集を 行い、心理テストの記入援助を通して状態を把握する。カウンセリング的なかかわりを心がけ、 待合室での表情や問診時のアイコンタクトを通して状態の変化を感じ取り、安心感が得られるようにする。 診察後には、来院の目的は達成されたか、受療者、家族に不安や疑問はないか観察し、 受診したことで満足感を得られるよう援助する。どんなつらい思いで来院したのかを洞察し、訴えを傾聴する ことで、私達も看護婦として成長させてもらっている。
 再来者には、あらかじめ外来看護婦が服薬状況や副作用の有無を中心に予診を行い、病状の変化を 注意深く観察している。看護記録はカルテに記載し、他職種に情報がすぐに伝わるようにしている。
 入院時の病棟との連携については、入院マニュアルを活用し情報を共有している。(資料1,2)。 内観療法の必要な症例と家族には、外来でビデオを見てもらうことにしている。

資料1 外来入院マニュアル


資料2 病棟入院マニュアル


2)早期退院へつなぐための十段階心理療法(クリティカルパス的枠組み)
 入院から退院まで治療過程を十段階に分け、明確にした入院治療計画書(資料3)を柱に、 クリティカルパス的枠組みに従い援助している。アルコール・薬物依存者用、一般精神科用には 別の治療プログラムが用意されている。治療プログラムを明確にすることにより、スタッフ、受療者・家族が 目標を共有しやすくなり、回復への意欲が増進し、効率よい治療・看護・介護が可能となる。
 入院診療計画書には、太田耕平院長が提唱する「十段階心理療法」2)に基づき、三期に分けた 標準化した治療、看護の流れを明示し、入院時に入院期間や治療内容についてインフォームドコンセントを 得ることで、受療者、家族との目標共有が可能となる。また、温度表(資料4)は、その1ヶ月の治療、 看護計画、作業療法プログラムなど、各職種からの情報を一目瞭然に表示したものを使用し、 毎朝のウォーキング・カンファレンス(Walking Conference)3)で、受療者に治療の方向性と到達点を 分かりやすく説明している。 ベットサイドには週間スケジュール表を提示し、受療者が退院までの流れを自分でチェックできるように 工夫している。こうした取り組みは、入院から退院までに受療者が受ける医療を知ることにより、 安心感が生まれ、医療スタッフとの信頼関係を築くことに役立ち、早期退院を可能にするのである。
 「高齢者」には、ADLや痴呆の状態により、外来で人体図式ケアプランに沿って細目に渡る 介護目標を設定し、退院後はさまざまな社会資源を組み合わせた治療計画を立てる。
 心療内科では、摂食障害(過食症、拒食症)、不登校、家庭内暴力など困難な症例に対し、 一般療法に加え内観療法を導入し、入院期間の短縮を図っている。
 内観療法とは、@世話になったこと、Aしてお返しをしたこと、B迷惑をかけたこと、の3項目を母や父など それぞれのテーマに沿い、具体的事実を調べる。小学校低学年、高学年、中学というように年齢を区切り、 順に現在まで調べる。集中内観は、自分を調べる作業を1週間かけて行う治療法である。
「アルコール症」には20年来、最近では「精神分裂病」に対しても内観療法の有効性が認められており、 多くの病態に内観療法が改善工夫されつつ適用されている。内観療法の導入により、 入院期間が短縮される傾向は明らかである。

資料3 入院診療計画書(事例2)

資料4 温度表(事例2)


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