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いじめ問題の医学的理解

「いじめ」問題の医学的理解と親、医師の対応
札幌太田病院   太田耕平  新ヶ江 正
北海道医報 第615号 pp.36-39, 1985より

目  次

  1. はじめに
  2. 「いじめ」の中心は中学生…その心理は
  3. 校医とPTAの連携…PTAの目標は
  4. 避けて通りがちなPTAと校医…いじめ問題
  5. 事例 1〜4
  6. いじめられない子育て…家庭教育
  7. いじめっ子にしない子育て…家庭教育
  8. いじめられの早期発見には
  9. いじめられている時…親がなすべきこと
  10. 医師としての注意…子供を診るとき
  11. おわりに




いじめられない子育て…家庭教育
  1. 基本的生活習慣をしっかり 食事、着換え、清潔、排泄、学習
  2. 仲間にきちんとした挨拶をし、意志を表現できるように導く。
  3. 子の良い点はほめて自信を持たせる。
  4. 対話とスキンシップで親子の愛と信頼、情緒、思いやりなどの交流をする。
  5. 学校の授業についていけるだけの学力をつけておく。
  6. 親子で相撲などスポーツを通して体力と気力をつくる。父親の出番である。
  7. 前向きで勉強やスポーツができるよう大まかな人生の目標を設定してあげる。
  8. テレビ番組は親と話し合いで決める。
  9. 近所付き合いなどで人間関係を多様にしておく。


いじめっ子にしない子育て…家庭教育
上記1〜9は全く同じ。さらに追加すると、
  1. 家庭内を明るく対話を多く。
  2. 物事を時間の流れの中で理解する考え方を身につけさせる。
  3. 勉強面での落ちこぼれにしない。
  4. 相手の心の痛みがわかるよう相手の立場で考える訓練。常日頃から「いじめ」は悪いと教える。
  5. 我が子がいじめている時は厳しくしかり、反省させる。
  6. テレビでの乱暴シーンやルール無視のプロレスの画面について、親は「これは悪い」としっかり教え、なるべく見させない。


いじめられの早期発見には…子の出すサインは?
  1. 学校に行きたがらない。遅刻、早退が増える。
  2. けが、あざ、鼻血、服の汚れなどが見られる。
  3. 表情が暗くなり、おどおどする。
  4. 友人が変わる、いなくなる。
  5. 感情不安定になり、落ちこんだり、あばれたりする。
  6. 頭痛、腹痛等で保健室に行きたがる。
  7. 職員室や教師に接近してくる。
  8. 成績が低下してくる。
  9. 無口になり、学校や友人のことを話さなくなる。

れが認められるときには、親は十分の時間をさいて子と語り合い、気持ちを受容し、実態を早期把握しなければならない。子は救いを求めてサインを出している。見落とさぬように注意が大切である。

いじめられている時…親がなすべきこと
  1. つらい気持ちをよく聞き受容してあげる。実態を詳しく把握する。
  2. 誰でもいじめられうることを教える。
  3. 父、母とゆっくり話し合える時間をつくる。親は具体的に力になってあげる必要あり。
  4. 担任教師と密に連携する。学校に何回も行こう。グループ造り、仲間造り、クラスの雰囲気の改善を教師に強く要求する。
  5. いじめっ子の親と会い対策をねる。父親が対応すること。
  6. スポーツ、特に相撲などで子の体力と気力の増進をはかる。
  7. 子への教育…いじめられた相手をニラミ、大声でけん制したり、明確に意思表示する。強い態度でのぞむ。
  8. 転校は最終方法であるが、自我の未熟な子の場合、直接解決には結びつかぬことあり。
  9. 不登校が続く場合には専門家に相談する。
  10. 昼休みなど教師の目の届かない時間帯には父母がトイレ、廊下、教室を巡回する。
  11. これらが有効でない時は、警察や教育委員会に相談する。

医師としての注意…子供を診るとき
  1. けが、打撲の原因がいじめによることがある。
  2. 頭痛、腹痛、はきけなどの心気症状の背景にいじめがあることがある。
  3. 遅刻、欠席が続くとき(登校拒否)、いじめられていることがある。
  4. 上肢、下肢、躯幹などよく観察し、あざや打ち身がないか、あれば原因をよく聞くこと。…身体検査のとき。
  5. 合理的な所見がないのに心気的訴えが続き、不登校に陥る症例では登校拒否を疑い、早目に専門医と連携すること。
  6. 表情が暗く、子供らしい元気のない子の場合、家庭及び学校、交友などについて詳しく親や本人から聞いてみる。
  7. 「いじめ」が疑わしい場合には早めに担任教師や校長に連絡する。

おわりに
 験した“いじめ”の事例は、いじめる例、いじめられる例の両方に自我の未熟さが目立つようである。この点に関しては、家庭教育が重要であり、価値観が自由で多様化し混乱している現代では、子に正しい価値観がある程度身につくまでの長い期間の家庭教育が必要と考えられる。一人っ子、二人っ子の増加による兄弟間の切磋琢磨の機会の減少も大きい要因であり、昔以上に親は細かい配慮が必要である。親自身が自らを振り返ってみる必要があろう。
 しかしながら、近年は大人にもかなりの問題が社会問題として増加してきている。アルコール症、薬物依存、抑うつ状態が増加し、離婚も著しく増加し、子供を暖かく育む環境が破壊されつつあることは真に嘆かわしい。まさに、今こそ、改めて正しい親のあり方、家庭のあり方を問い直し、親みずからが反省していかねばならない。マスコミや教師にも一層の改善と努力を要望していかねばならない。
 上述のような親、教師のあり方が、現代社会の中で子を非行、登校拒否、いじめなどから防ぐ最良の、しかも唯一の方法と思われる。

 会必理的時代の流れは急であり、その影響はもろに子の世界、子の心に及んでいる。親、学校及び教師、さらに子を診る医師は子の心の変化に即応し、子のニードに応じられる心構えを高めていかねばならない。これからの医師や教師は子の心の問題にきめ細かく理解し受容し、正しく導くことが要望されるのである。
※プライバシー保護のため、症例について多少の加工をした事をお断りします。