心療内科診療 Q&A



高齢期をいかに生きるべきか

目  次

  1. はじめに
  2. 高齢者とは…その多彩さ多様さ
  3. 高齢者の性格傾向と自我欲求レベル
  4. 良い高齢期と社会参加のために
  5. 職員や若い人々に望むこと
  6. 老人保健施設




4.良い高齢期と社会参加のために

 齢期においても前述の人間の6面がすべて健全であれば誠にしあわせです。65歳以上から20年、30年は長生きが可能な時代です。元ア症者にとって断酒会活動は貴重な奉仕活動、社会参加です。
 高齢者の社会参加のレベルは6段階に分けられます(右表)。各の段階でもさらに細目のメニューが用意されるでしょう。1から6と衰弱進行し、逆に6から〜4〜3〜2へとの回復も当然期待され、その目的で介護、治療がなされるべきでしょう。
高齢者の社会適応段階
(衰弱)(回復)
1.現役で活躍、断酒会活動
2.老人クラブ、町内会、
  断酒会活動
3.家庭内適応、断酒会活動
4.病院、老人ホーム
5.酩酊し、あまされ老人
6.寝たきり老人


 齢者の有するハンディを人間の6面から論じるならば次のようになるでしょう。

高齢者をめぐる諸相

T.身  体 疾病(高血圧、糖尿病、痛風、失禁、麻痺、衰弱)など 内科や専門医による治療、看護、介護、日常生活の自立、車椅子の使用

U.家  庭 不和、離散、孤独 家族会、家族カウンセリング、ショートステイ、デイケア

V.社会面 失業、ひま、無役割 デイケア、レク、スポーツ、遠足、ボランティア活動、地域活動、文芸活動、コーラス、詩吟等

W.教育教養 向上心の低下、学習の機会の喪失 教養講座、趣味講座、デイケア、見学旅行

X.精神人格 抑うつ、老年人格変化、痴呆 精神医学的治療、カウンセリング、ケースワーク

Y.意  欲 無目的、抑うつ、自閉 目的、役割の創造、援助

T〜Wを健全に保ち向上するには断酒しかありません。



5.職員や若い人々に望むこと

無財七施  齢者は人生の大先輩であり、多くの知恵とプライドを持っておられます。敬意と愛情を持ってお世話させていただくのは当然です。きめ細やかな観察と感受性、洞察をもって理解し、その能力を伸ばし生きるよろこびを享受していただくためには、その個人の生活史や人生観の理解とともに、介護者自身が常に学習し、研究的な視点を保つことが大切でしょう。

 又、高齢者が前ページの社会適応段階の6の段階「寝たきり」の状態から、4〜3〜2と回復した症例のあることが先輩老人保健施設の経験から明らかになってきています。アルコール症者は心身の病弱から「寝たきり」になりやすい。高齢期のアルコール症者は老人痴呆も出現しやすく、回復に長時間を要する。さらに幻覚やせん妄も持続しやすい。

 それ故に、寝たきり高齢者を医学的事情の許す限り起床させ、車椅子に乗せることの重要性が明らかとなり、高齢者のもつ回復能力が期待できるのです。一方、転倒による骨折などを予防することも当然であり、骨の弱化を防ぐ服薬も必要です。


 齢者には豊かな人生経験、学識、芸能を持っている方も少なくない。多くは語らないが、元教員、元校長、一流企業のOB、町内会の役員など多彩な能力をお持ちの方も多い。そのような個々の力をどのように発揮していただくか、われわれ介護させていただく者の重要な任務でしょう。
 高齢者の社会参加は従来の自分の特技を生かすボランティアとして、児童、生徒との接触、援助、障害者の慰問、公園や道路の清掃など、断酒会活動も若い人のためになる立派な活動です。