心療内科診療 Q&A



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心の健康とは

太田耕平著:幼児から高齢者までの心の発達 十段階心理療法 第7版
〜自信の回復と幸せな人生のために〜、182〜184、1998

目  次

  1. 「人生の意味のなさ」と意味あるものにするには
  2. すべての人に人生哲学が求められるか?
  3. 「十牛図」と精神医学
  4. 生きる意味とその発達段階




心の健康 (Sail・L・T)


  1. 未熟な言動に退行しようとしない
  2. 独立心と責任感をもっている
  3. 人にあたえることができる
  4. 仕事や生産に意欲が強い
  5. 他人からの好意を受け入れる能力がある
  6. 他人と自己中心的競争をしない
  7. 統合された良心をもちこれを向上させている
  8. 性格的側面でのびのびしており配偶者と和合している
  9. 自己嫌悪や他人への敵意がほとんどない
    あってもこれらを建設的に役立たせている


1.「人生の意味のなさ」と意味あるものにするには

 れらの新しい心理的空虚感から発生する精神症やうつ状態の治療はおのずから新しい工夫や対応を求められます。その個人の病気だけを見る視野でなく、人生そのものへの援助、さらにその人の人生哲学自身への接近でなければ効果は期待できないと思われます。愛情、安全、所属、尊厳、理解、目的などを生活から自力で得るべく援助することです。
 家事労働や道具的労働から解放された人間に新しく課せられるのは、自分の人生を哲学することです。現代人は労働や遊びに逃避せずに、「人生の本質」を哲学することを求められます。一般のほぼ健康人ですら実存的空虚に陥りやすい現在、分裂病やアルコール症などを経験した人々の空虚感はさらに著しくなり、その援助は多彩とならざるを得ません。


2.すべての人に人生哲学が求められるか?

 学という言葉は、明治の初期に西周(にしあまね)が英語のphilosophyを訳したもので、<知恵を愛する>の意味です。西周は周濂渓の<士希賢(士は賢をこいねがう)>にならい、賢哲の明智を愛し希求する意で、はじめて<希哲学>すなわち哲学、明かな智を希求する学と訳しました。これが後に文部省に採用されたという(平凡社大百科辞典)。
 アインシュタインは「科学なき医学は力不足であり、哲学なき医学は意味不明である」とほのめかしたといいます。フランクルは「哲学を嫌って心理療法を行うことは、必然的に、明瞭で本質的な人間現象の次元を除外してしまう」、「哲学なしにいかに人間を理解しうるであろうか」、「心理療法家は患者が戦っている当の問題には全く盲目なのである」と言っています。


3.「十牛図」と精神医学

 洋の禅思想のなかにすでに人間の真なるあり方、人の生き方の意味を十段階に図説した禅思想があることは有名です。
 それは「十牛図」であり、宋代中期に廓庵がそれ以前のいくつかの系統をまとめて「十牛図」としたらしいのですが、800余年昔にこのような発達段階の思想があったことは真に驚くべきことであり、東洋禅思想が近代の西欧的発達心理学に決してひけをとらないことを示しています。
 「十牛図」のなかでもハイデッガーが感動したという第9図は私達の真の自己をあらわしています。「流れる川と花咲く木」だけが描かれているのは、人と自然は一体であり、川や草木と人は平等、一如であることを主張しているようです。
 また、「牛」を幻覚、妄想と考えると、治療により幻覚、妄想が消失した後の心のあり方、心の発達すべき方向を示唆しています。この十牛図を参考にしアルコール症の十段階療法を工夫してみました。
 十牛図の第8図「人牛倶志」は、内観中に体験する「自分はすべて与えられて形成されてきた」という驚きと安心、さらに自他一如の共感を示しているようです。十牛図に見る心の発達段階は集中内観やロゴテラピーに共通していることに驚く。
 私は精神科医になって20年たってやっとアインシュタインやフランクルのいうことの一部を理解しつつあります。前述のアインシュタインの言葉の「医学」を人生におきかえて「勉強なき人生は力不足であり、哲学なき人生は意味不明である」としてみると極めて分りやすいと思います。


4.生きる意味とその発達段階

 れは人間の年齢や個々の心的発達段階で異なるし、段階的に発達することが知られています。フロイト、エリクソン、マズローらはそれぞれ欲求(人生における)の階層を示しています。私は、アルコール症者やシンナー乱用少年、登校拒否少年などの経験から、各世代における日本的な社会化発達段階(生きる意味)を考えてみました。(図21、101ページ)。
 この段階のひとつひとつ上がるには努力や苦悩を要すると考えられます。努力や苦悩に耐えられない人間はこの発達を頓挫せざるを得ません。それがアルコール症やその他に見られる実存的空虚です。
 己自身の魂の安住を求め、そのための悩みや学習がひいては生きる意味に迷う患者さん方の幸福にいくらかでも役立てば幸いと考えています。




ロゴテラピー[英]logotherapyとは

 人生の意味を求め、それを深めることを中心にする心理療法である。
 人は「自分の運命ばかりでなく、自分自身を決定づける」のである。
 人は自分の人生航路を形成していくばかりでなく、自分自身を形成して行くのである。
 人生を意味あるものにするには
  1. 自分から自分の人生に何を与えるか。
  2. 自分はこの世界から何をうけとるか。
  3. 逃れなれない危機、運命に対してどんな態度をとるか…にかかっている。

「人生に疑いをもつ人こそ真に人間的であると思う」
フランクル

人生の意味と目的の欠如は生活をまとめる力を欠くために、浮き草のようにさすらうeasy goingな人間、のん気きわまりない人間に見られる。