精神科診療 Q&A



※過去「精神分裂病」という病名が用いられていましたが、現在は「統合失調症」と改称されております。当ページでも現状に合わせ病名記載を「統合失調症」へ変更しております。ご了承下さい。


統合失調症者の集中内観療法の有効性

〜奏効性を高めるための工夫と経過〜

太田耕平 杉山善朗
精神科治療学13(10);1215〜1223,1998,星和書店(東京)


目  次

  1. はじめに
  2. 保護室内での集中内観療法
  3. 内観療法室の設置とその功罪
  4. 病室内での略式内観から集中内観へ
  5. 病棟単位からみた集中内観療法
  6. 職員の内観体験と内観教育の重要性
  7. 内観療法課と内観療法職員ステーションの設置
  8. 集中内観療法の記録について
  9. 治療計画の中での位置づけ
  10. 導入の工夫
  11. 統合失調症圏の集中内観過程
  12. おわりに




抄  録

 中内観療法は、臨床的には神経症、不登校など心身症、アルコール・薬物依存、うつ病などに広汎かつ短日数での有効性が知られている。統合失調症に対する本療法の有効性は文献的にも否定されていない。
 当院では約20年前から本療法を種々の病態に適応し有効性を確認してきた。なかでも興奮性シンナー乱用や覚醒剤精神病の有効性を経験し、ついで統合失調症をも治療対象となり得る導入法があることが分かってきた。
 とくに向精神薬により幻覚妄想が軽減しても親をうらんでいるとか対人不信が強い、暴力反抗傾向が強い症例には導入に工夫すると有効性が著しい。また、無為、自閉傾向の者にも自信、明るさ、積極性、対人疎通性などに改善を認め早期退院となる症例が多い事実がある。
 PTSD(外傷後ストレス症候群)に対する記憶回想療法は有効であるが、内観療法も型の整った記憶回想療法の一つと言える。今後、本法から見た統合失調症論、治療機転など解明されるべきことが山積している。


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はじめに

 中内観法は吉本伊信により開発された精神修行、人格改善法であった。医師や医療機関においては早くから心身症、神経症などに有効性が知られていた。一方、統合失調症に対する本療法も試みられ、同病家族の内観について、それぞれ有効性が語られてきている。
 当院では、昭和49年、1例のアルコール症に著効を得て少しずつ適用範囲の拡大を試みつつ試行錯誤で本治療法を継続してきた。この間アルコール症者の家庭から発生する不登校児、シンナー乱用者、薬物依存、覚醒剤乱用、非行児などの治療も効果があり、本法が短期間で他の治療法に比べ著効を示すことが明らかになった。
 さらにこの数年、食行動異常症や特にこの2〜3年は統合失調症への有効性を吟味しつつある。いずれの症例にもそれにふさわしい治療場面、病棟、病室構造、人員配置が必要である。

 院の本法に関する経験と、統合失調症者に対して効果をあげるための工夫をしてきたその実際について、経時的視点も入れて反省してみたい。なぜならばこれらの工夫、経験、設備、内観記録、内観経験のある内観担当の人員を欠いた状況では、統合失調症者への集中内観療法への導入は困難であり、本法が分裂病には無効であるという誤った結論に導かれる恐れがあるからである。